(みきたにひろし 1965年神戸市生まれ。88年に一橋大学卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)に入行。退職後、97年にエム・ディー・エム(現・楽天グループ)を設立し、楽天市場を開設。現在はEコマースと金融を柱に、通信や医療など幅広く事業を展開している。)

 東京五輪が間もなく開幕する。

 僕は昨年来、五輪の開催については明確に反対の立場を表明してきた。新型コロナウイルスが流行するなか、日本の心許ない防疫体制では、海外から大勢の選手や関係者が集まること自体が「自殺行為」だと思えたからだ。これは僕だけではなく――表立って意見を言うかどうかはともかく――多くの企業経営者も本音では反対だったに違いないのだが。

 その意見は今も全く変わらないが、一方で「五輪はどうやっても開催されるだろうな」と確信した時、僕がすぐさま始めたのは「次の行動」に移ることだった。「開催するのであれば、少しでも守りを固めなければならない」――すなわちワクチン接種を少しでも早く、多く人々の間に広めていくために何ができるのかを考えて動き始めたのだ。

 その最初の一歩として、ワクチンの接種体制強化の提言を伝えるため、菅義偉総理のもとを訪ねたのは今年5月2日のこと。政府は4月下旬に7月末までの高齢者の接種完了を目指すと言っていたが、その頃の接種人数は到底間に合うペースではなく、もどかしさを感じていた。

 菅総理とは以前から勉強会などで顔を合わせる関係だったが、携帯電話の事業者ともなった僕とは、総理もできれば会いたくなかっただろう。実際に、最近ではほとんど話す機会がなくなっていた。ただ、4月の訪米以降、総理が五輪開催の意志をより強く固めたように感じたので、今回だけはどうしても会ってほしいと連絡をした。

目的は集団免疫の獲得

 公邸で会った総理に対し、僕は主に3つの「提言」を伝えた。

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source : 週刊文春 2021年7月29日号