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順大・塩尻和也ら、“サンショー”こと3000m障害視点から見る箱根駅伝の注目選手たち

マイナー競技からの飛躍。極私的観戦ガイド

2019/01/02
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今回の箱根ランナー唯一のオリンピアン

 その筆頭格が塩尻和也(順大4年)だ。2016年リオ五輪のサンショー種目代表で、今回の箱根ランナー唯一のオリンピアンだ。今季はここまで大舞台ではトラック、ロードともに日本人選手には負けなしと、圧倒的な実力を見せている。

 サンショーの面から見て行くと、今季は2018年6月の日本選手権を自己ベストで圧勝すると、11月の日本インカレでも4連覇を達成。8月のアジア大会でもレースを引っ張る積極性を見せながら銅メダルを獲得した。確かな走力に裏打ちされた走りで、ハードリング技術にはまだまだ伸び代を感じる。一方で、それでもなおハイペースで走りきれてしまう総合力は一級品だ。

 これまで3度の箱根では、いずれもエース区間の2区を走って不完全燃焼の走りに終わっている。今年も2区にエントリーされているが、区間最後に待ち構える権太坂のアップダウンでその脚力を活かしきることができるかがポイントになってくるだろう。

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箱根駅伝予選会を走る塩尻(写真左、ゼッケン1番) ©文藝春秋

「山上り」とフィジカルの強さ

 また、昨年山上りの5区で9人抜きの区間賞を獲得し、現状で「山の神」に最も近いのが法大3年の青木涼真だ。実は彼も2017、2018年と2年連続で関東インカレのサンショーを制しているハードラーである。

 特筆すべきはその滑らかなハードリングと、それをラストまで続けることができる体幹の強さだ。前回大会、天下の険を区間新記録で駆け上ることができたことと、このフィジカルの強さは無関係ではないだろう。今季はここまで故障もあったが、補強を見直すなどして修正。トラックでもハードル飛越前のペース変動を巧みに活かして展開をコントロールするレース巧者でもあり、今年も大崩れはなさそうだ。あとはどれだけ記録を上積みし、チームに貢献できるかだろう。

2018年11月に行われた全日本大学駅伝を走る法政・青木(写真右から3人目) ©水上俊介

 優勝候補の一角でもある東海大の山下りを任されたのは、前回大会でも区間2位で走った中島怜利(3年)だ。同級生の3年生に黄金世代が揃う同大にあって、1年時から「僕には箱根しか注目を浴びるチャンスがない」と、反骨精神を見せていた。

 実は中島も高校時代はサンショーで実績を残した選手。小柄ながらがっちりとした下半身で、全身を使ったパワフルなハードリングが目を引いていた。今季の駅伝シーズンは、ここまで10月の出雲駅伝で失速、11月の全日本大学駅伝ではメンバー漏れと悔しい思いを抱いているはずで、箱根駅伝では持ち前の負けん気の強さとパワーを見せてくれるだろう。