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実況アナの球種まちがい問題……大瀬良大地と九里亜蓮が教えてくれた判別のヒント

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/08/09
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 同じ悩みは、野球実況だけではないようだ。インターネットのプロ野球速報だ。「見ますよ。一球速報なんかを見返していると、ツーシームなのになぁ……ということがあります」。

 九里の変幻自在なピッチングは、放送席はもちろん、打者もインターネットの世界も幻惑しているのである。

「僕の方も、球種を増やしておきますよ」

 カープは球団史上初のリーグ4連覇へ向け、驚異のV字回復を見せている。首位と最大12ゲーム差あったが、今や1.5ゲーム差(8月8日現在)は十分に射程圏内である。特に、週の後半のローテーションを支える同期コンビの存在は頼もしさを増している。8月のタイガース3連戦、2日の初戦で大瀬良が完封で8勝目を挙げれば、4日には九里が6回2失点の好投で6勝目をマークした。

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 大瀬良の完封を支えたのは、フォークボールだった。よしよし、集中して縦と横の変化を見極めていこう。実況者として、決意を新たにした。

 あとは、九里のピッチングにいかに対応するかである。球速、軌道、手元のデータ、あらゆる情報を総動員して球種の判別に臨みたい。もちろん球種が全てではないが、トライするには十分な課題である。

「目指すは、九里さんの球種正解率100%です」。そう告げると、あの爽やかな笑顔がマウンド上さながらの不敵な笑みに変わった。「それができれば凄いと思いますよ。僕の方も、球種を増やしておきますよ」。

 実況の球種間違いは、選手の進化とトライの裏返し。それだけ、打者を幻惑させようと工夫していることの裏返しでもある。そんな言い訳はさておき、カープには、これだけの投球をしながらも、こんな会話に向き合ってくれるナイスガイがいる。しかも、同期で先発ローテを守っている。

 普段から仲も良く、ライバル意識も持つ二人の、ビールかけを見たい。おそらく、瓶を持つ「指の握り」に目をやってしまうに違いない。

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