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賛否両論を巻き起こした超ド級の子育てコミックエッセイ(前編)

『娘が発達障害と診断されて… 母親やめてもいいですか』 (山口かこ 文/にしかわたく 絵)

genre : エンタメ, 読書

その内容に衝撃を受けた読者から批難やエールの声が相次ぎ、騒然となった話題書が、この5月にいよいよ文庫化! 本書は実話に基づいた子育て体験コミックエッセイである。この本の著者、そしてまた当事者でもある山口かこさんにお話を伺いました。

◆ ◆ ◆

――この本の単行本が出たのが今から3年前。刊行後、厳しい意見が相次いだり、逆に励ましのエールもあったりと賛否両論を巻き起こしましたが、それは予想されていましたか?

山口 あ、もちろん、覚悟というか想定はしていたので、その事で驚いたりショックを改めて受けるということは、そんなになかったですね。

――この本が出るきっかけは、どんな事だったんですか?

山口 もともと私は、「発達障害の関連の本に、企画でもなんでもいいから関わりたい」という事を、人に会うごとにずっと話していました。そうしたところ、「発達障害の子どもを持つお母さんの本を作ろう」という企画に巡り合えたんです。ライターとして他のお母さんを取材して書くつもりでいましたが、編集者と話す中で、「あなた自身の話を書けばいいんじゃない」と言われて。「自分のことを書くのが一番早いじゃないか」って。まさか自分の体験を書くことになるなんて思いもよりませんでした。

――そして、子育ての体験を原稿に書かれた。

山口 そうです。最初の原稿を前にして、この本でマンガを描いてくださったにしかわさんも交えて、編集者と3人で話し合ったときのことは今でも覚えています。実はにしかわさんに「これじゃ描けない」とそのとき言われたんです。私が中途半端にしか書くことができていなかったので、行き詰っていたのを見抜かれたんですね。それで「実はこういうことがあって……」と打ち明けた。

――真実を打ち明けたときは辛かったんじゃないですか?

山口 聞いた方もびっくりして、結構怒られましたね、編集さんに。

――怒られた(笑)??

山口 厳しいことを結構言われましたね(笑)。後から聞くと、「話を引き出すためにわざと厳しく怒りました」とは言われたんですけど。でも、そう厳しく言われると私もやっぱり、「でも、あのときはこういう気持ちだった」というのが反論とまではいかないですけど、湧いてくるじゃないですか。そうして話しているうちに3人で「どうしようか……」とウンウン唸ってしまった(笑)。そしたら編集者から「もう贖罪の本として書くしかないんじゃないか」と言われて。にしかわさんにも、「本当の事を全部正直に書いてもらってから、自分が漫画を描けるかどうか判断したい」と言われました。

――自分のことをさらけ出して書く作業というのは辛いですよね?

山口 そうですね。

――何がしんどかったですか?

山口 まずは思い出して振り返りながら書かなきゃいけないので、自然に当時の気持ちに戻ってしまいました。そうするとフラッシュバックみたいになってしまう。それがまずしんどいのと、そのときに持っていたネガティブな感情というのをきちんと言語化することで客観視できる分、申し訳ないという罪悪感もひどかった。当時考えていたことが実はすごい自分勝手な思考だったり、子供に対して残酷な感情だったのが明らかになるわけです。「ひどいこと考えていたんだな」と痛感し、毎日、泣きながら書いていたような感じでしたね。1年ぐらいかけて原稿に書き起こしました。

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