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岩瀬 大輔
2017/02/21

まだUber、Airbnbを使ってないの?

シェアリングエコノミー1年目の教科書 #2

コペンハーゲンからケープタウンまでUber三昧

 数年前から海外で正規のタクシーに乗ることが劇的に減り、もっぱらUber(ウーバー)を使うようになりました。過去数年ではニューヨーク、サンフランシスコ、シンガポール、シドニー、さらにはコペンハーゲン、イスタンブール、ケープタウンなどでフル活用。私の周りでは「何をいまさら?」というくらい浸透していますが、読者の皆さんの中には未体験の方もいらっしゃると思うので、ご紹介させてください。

 Uberが従来のタクシーよりも優れている理由はいくつもあります。(1)迎車料金不要ですぐにお迎え、(2)行き先をスマホで事前に入力すればGoogle Mapsで走行ルートと料金明細が表示されるので遠回りやぼったくりの心配がない、(3)事前にクレジットカードを登録してあるので下車時に支払い不要、(4)利用者による運転手の評価が表示されるのでサービスが良い、(5)正規のタクシーよりも安価であるケースがほとんど、(6)混雑時には料金がリアルタイムで上昇するので、需給が調整され、高いお金さえ払えば乗車できる。特にタクシーのサービス品質が悪い海外都市では、(4)の運転手評価がUber急成長の大きな要因となっている気がします。

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本質は「便利なタクシー」ではなく「働き方改革」?

 もっとも、落とし穴がないわけではありません。北京空港に降り立ってUberを呼んだときのこと。空港は待ち合わせ場所が複数あって電話による調整が必要なのですが、運転手さんが北京語しか話せずに出会えない・・・・・・あきらめてタクシーの乗車場所に並ぶことに。また、雨の香港では、運転手から一方的に注文をキャンセルされ続けて車がつかまらなかったこともあります。更に、注文後にスマホのアプリが固まってしまったり、通信が圏外になって繋がらずに困ったことも。

 興味深いのは、Uberの本質的な意義が「利用者にとって便利なタクシー」にとどまらないことです。ひとつは先に述べたダイナミックプライシング(変動料金制)。需給に合わせてリアルタイムで価格が変化する世の中になると「物価変動(インフレ・デフレ)」のメカニズムが変わる可能性があります。もうひとつは、社会の働き方の変革。シドニーでUberに乗っていると、運転手から「安倍首相の為替政策はどう?円安は進むと思う?」と議論をふっかけられました。日中は為替のブローカーをやっており、夜にアルバイトで運転手をやっているとか。「どうせ車通勤だから、帰りに数千円でもお小遣いを稼げたら」とのこと。Google Mapsがあるので運転手としての経験は不問。インターネットとスマホデバイスによって余剰な労働力を細切れに提供し、新しい働き方を可能にしたプラットフォームであることがその本質なわけです。Uberが7兆円近い企業価値評価で、1兆円以上もの資金を調達してきた所以です。

失敗したイスタンブールでのエアビー初体験

 Uberと並ぶシェアリング・エコノミーの代表格がAirbnbです。一般人がアパートの部屋をホテル代わりに貸し出すサービス。海外からの観光客が急増し宿泊施設が不足しているわが国でも、法的な位置づけがグレーなまま拡大しているようです。サンフランシスコやニューヨークに出張するネットベンチャーの友人たちが使いこなしているのをFacebookなどで羨ましくみてきましたが、実は私はまだ苦手です。

 初体験がイスタンブール、先輩夫婦と一緒にステイ、という設定に無理があったのかもしれません。使ってみて、苦労したことが3 つ。1つ目は、滞在先がGoogle Mapsで表示されない道路にあり、何度も迷子になったこと。2 つ目は、シャワーのお湯機能が故障しており、何回も大家を呼び出さないと温かい風呂に入れなかったこと。3つ目は、一緒にステイした先輩夫婦とのプライバシーがなさすぎたこと。宿泊予定を切り上げてチェックアウトし、普通のホテルへ移動しました。この体験から学んだのは、Airbnbは土地勘があり、言語も通じるところがいいこと、そして設備や施設の品質にバラつきがあることを覚悟で臨むこと。その後、ケープタウンでも挑戦してみたのですが、大家の洋服が室内に大量にかかっていて生活感が溢れており、あまりに落ち着かなかったので再びホテルに避難してしまい、挑戦は二連敗で滞っています。挑発的な本稿のタイトルとは裏腹に、私はまだAirbnbを使いこなせていません。

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まずはチャレンジしてみよう、シェアリング・エコノミー

 日本でもインバウンド観光客急増の波に乗って、空いている部屋を有効活用しようと、自ら大家としてAirbnbをはじめている人たちも増えているようです。私もできないかと考えてみたのですが、冷静に算盤を弾いてみると、これで収益をあげるのは決して簡単ではないことが分かります。競争が増えるなかで部屋の稼働率をあげるためにはギリギリの宿泊料金設定が求められる。一方で、チェックアウトした後の部屋の清掃作業、特にベッドのシーツなどのリネンや風呂場の掃除などは、それなりにお金がかかる。一棟に複数の部屋を持っているなどよほどのスケール効果をもってやらない限り、努力に見合った収益を出すのは簡単ではなさそうです。最近ではAirbnb専門の清掃業者が急増していると聞くと、米国のゴールドラッシュの際に結局収益をあげたのは金を掘りに来た人たち向けに道具を売り、宿を提供した業者だったという話を思い出します。

 その他の例では、UberがはじめたUberEATSという出前サービスを愛用しています。都内有名レストランの料理をスマホで簡単に注文できるものです。今後、使ってみたいのはバイクシェア、会議室シェア(古民家や野球場などを会社イベント用に借りる)、駐車場のマッチング(以前使ってみたときは行きたい場所にまったく物件がなく使えませんでした)、家事代行などでしょうか。お勧めのサービスがあったら是非教えてください。

 シェアリング・エコノミーは利用者にとっても提供者にとっても、大きく社会を変革しつつあります。感度の高いビジネスパーソンになるためにも、メディアで話題になっている新しいサービスを、ひとつひとつ試してみて、その本質がどこにあるかを考え、同時にそれぞれの収益モデルを考えてみることをお勧めします。

(構成=田中瑠子)