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2017/03/11

NHKスキャンダル 「応酬話法」にガッテン!

週刊文春3月16日号 最新レビュー

 睡眠薬で糖尿病が治療できるなどと放送し、その翌週、番組内で謝罪するハメになったNHK総合の番組「ガッテン!」。今週の文春は「NHK『ガッテン!』を信じるな」と題して、過去の放送から「大腸がん検診に美肌効果」「お化け屋敷で恐怖を感じると血栓ができる」などの科学的な手続きを欠く番組特集の事例を紹介している。

 また番組のチェック体制も取材。番組立ち上げから18年におよんで制作に携わった元ディレクターが実名で登場し、「管理職がボンクラでチェックが不備」と告発する。なんだか「ベンチがアホやから野球がでけへん」みたいな話である。

週刊文春3月16日号より

「強欲徴収マニュアル」で思い出す“応酬話法”

 ここのところ、NHKは文春のレギュラーのネタになっていて、「『連続強姦記者』を野放しにしたNHK無責任上司」「私はNHK『受信料サギ』に手を染めた 徴収員の告白」(2月23日号)、「NHK受信料サギ 徴収員が懺悔『死人とも契約していた』」(3月2日号)、「NHK内部資料『強欲徴収マニュアル』入手」(3月9日号)という具合。

 先週号の「強欲徴収マニュアル」では、受信料の徴収マニュアルに載る「人はYESが続くと断りにくくなる」といった興味をひくノウハウが紹介される。

 また受信料が高いと断られた場合の想定問答も載っていて、その場合、<(1)受信料の使い道はご存知ですか?>、<(2)どういった番組ならお支払いしてもよいと思いますか?>、<(3)何に比べて高いと思われますか?>と返すのだという。なんだか村西とおるの“応酬話法”ような話ではないか。

「一億二億のビジネスが吹き飛ぶことだってあるんでございます」

「ナイスですね」の名調子で知られるAV監督・村西とおるは、元々百科事典のセールスマンであった。それを売るために習得したのが応酬話法である。村西の半生を書いた本橋信宏『全裸監督』(太田出版)でも応酬話法に多くの紙幅が取られている。そこで村西は先輩から応酬話法を学んだときのことを語っているのだが、うまい具合にNHKのマニュアルにある「高い」と断られた場合の(3)と重なっているので、長くなるが引用する。

「高いと言われたとき、まず受話器を例にとってしゃべりなさい。それで机の上にあった受話器を手に持ってね。お客さま、高いとか安いとかは比較の問題でございます。たとえば、ここに電話機がございますね。この電話機を百万といったらいかがでしょう。物というのは比較の問題でございまして、この電話はアフリカでは高いですね。お客さまの言う通り。でも欧米や日本ならいかがでしょう。高度情報化社会の現在において、電話は必需品です。電話一本遅れたために一億二億のビジネスが吹き飛ぶことだってあるんでございます」

村西とおる監督 ©原田達夫/文藝春秋

 応酬話法によって、月に4セット売れれば営業成績トップのところ、村西は多いときには週に20セットも売る。英語の百科事典でおまけに全巻で総額20万円、今の貨幣価値なら100万円もする代物を、である。その後いろいろあって、裏本の帝王になり、AVの帝王となるのだが、彼を支えたのは常人離れしたバイタリティと、卓抜した応酬話法であった。

 村西はヤクザ相手に、これからは海外マフィアと英語でやりあい、「右手に拳銃、左手に英語辞書」が極道の理想の姿と説いて百科事典を売る。いっぽう、NHKの徴収員はといえば、衛星放送が映らない世帯にも地上波契約より高額な衛星放送の契約を結ばせたり、死者とも契約さえして、成績を伸ばす(週刊文春2月23日号・3月2日号)。

 こうなったら、相手の手の内を知る応報話法の達人として、村西とおるには「ほこ×たて」でNHK徴収員と勝負してほしいところだ。残念ながらヤラセ発覚で打ち切りとなり、番組はもうないが……。

「ガッテン!」と「納豆」

 ところで「ガッテン!」に似たケースとして「発掘!あるある大事典」がある。ときは2007年、この番組が納豆ダイエットを放送するや、全国のスーパーで納豆の売り切れが続出する。あまりの騒ぎになるもんだから、週刊朝日が調べてみたところ、データの捏造が発覚し、番組自体が打ち切りになる。

 くしくも今週の週刊文春、「ガッテン!」記事の前に「納豆」特集があるのだが、これはなにかのサインであろうか。

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