昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

小寺 律
2016/01/09

大切なものは目に見えない 三省堂書店池袋本店の覚悟

genre : エンタメ, 読書

 本屋コラムを書いていることもあって、気になる店舗の閉店・開店情報はマメにチェックするようにしている。2015年の最大のトピックは、やはりリブロ池袋本店の閉店と、三省堂書店池袋本店の開店だろう。創業130年を超える老舗、本の街を担うブランドが、神保町と並んで池袋「本店」として出店するという。以前、有楽町店で取材させていただいた新井見枝香さん(食いしん坊っぷり炸裂のPOPが面白い 三省堂書店有楽町店の「売る勇気」)が、池袋本店に移籍したということで、お話をうかがって来た。

三省堂書店池袋本店、別館地下1階メイン売場。

 12月6日のグランドオープンまでは、雑誌や話題書などを最低限の売場で展開しながら、改装を続けてきたことから、新しい売場がどう評価されるか不安があったという新井さんだが、オープン当日は、たくさんのお客様が来店され、たくさんお買い上げいただいたのはもちろん、売場や棚やフェアをほめていただいた、この場所に本屋さんがあってよかったと言っていただけたのでホッとしたとのこと。

 中でも人気があったのは、企画編集棚「tanakanata」(棚・彼方という意味らしい)。別館地下1階、書籍館地下1階から4階まで各フロアにある、お勧め棚だ。各フロアの売場と連動して設定したテーマに沿って、小説・写真集・実用書・絵本・マンガとジャンルを横断し、刊行時期も最新刊から超ロングセラーの名作まで、バラエティに富んだ陳列になっている。

企画編集棚「tanakanata」、
この写真は理工書売場の書籍館4階。
児童書売場「totoa」。木製玩具や雑貨が

 本社スタッフ機能はやはり神保町にあるが、池袋本店は、三省堂書店の将来がどうなっていくかを決める新しいモデルスタイルを作っていく新しい店という意味を込めて「本店」と名付けたという。本店準備室では、文庫や文芸書、雑誌、コミックスなどといったそれぞれのジャンルの担当者の他、池袋本店を性格付ける4つの柱、企画編集棚、子どもの本と玩具の売場、イベントスペース、そして、接客とオペレーションのそれぞれに専任担当を置き、新しい店はどうあるべきかを一緒に作ってきた。

 接客を統括する専任者がいるというのも珍しいが、コンシェルジュ的なお客様のご案内の他、各フロアの混雑の具合を見ながら人員シフトを調整する役割も担っているとのこと。新井さんはイベントを専任で担当している。有楽町店では文芸を担当し、文芸の販売促進のためにイベントを立ち上げた経緯もあって、最初は自分の担当ジャンルを取り上げられたようで悲しかったが、少しずつ自分の立場でやれることが見えてきたという。いろいろな書店のイベントに参加した経験を活かして、内装や間仕切り、椅子や音響に至るまでこだわって設計し、お金を払ってもいい、参加することに価値を見いだせるようなスペースを作っている。

イベントスペース「Reading Together」、
座り心地のよい椅子、落ち着いた内装。

【次ページ】見せるだけ、待っているだけではない売場

はてなブックマークに追加