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千歳船橋「八兆」の唐揚げそばは「ライスが欲しくなる旨さ」

小田急線沿線屈指の立ち食いそば屋、天ぷらもいいけど…

2017/06/06

genre : ライフ, グルメ

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 私鉄沿線には立ち食いそば屋が点在している。私鉄が経営する店が駅に常設されていることも多い。京急線なら「えきめんや」、東急線なら昔は「二葉」で今は「しぶそば」、西武線なら「狭山そば」、そして小田急線なら「箱根そば」である。

 なかでも小田急線の「箱根そば」は多くの駅にあり、どこも人気だ。個人的な感想だが、「小田急線」は名前を「小田急箱根そば線」にした方がいいと思うくらい、小田急グループは熱心に経営している。有難いことである。つまり、小田急線を利用されている立ち食いそば愛好家の舌は肥えているといってよいだろう。

 そんな小田急線沿線にあって、箱根そばに勝るとも劣らない、沿線屈指の立ち食いそば屋がある。千歳船橋にある「八兆」である。

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大将は草緑色のセーターを着ていた

「八兆」を初めて訪問したのは2000年の晩秋だった。まだ小田急線が高架になる前である。今の高架の場所には商店が線路沿いに並んでいて、改札を出てその商店街を進んだところに店はあった。

 当時の店は広く、おばちゃんたちが元気に働いていて、大将が草緑色のfishermanのようなセーターを着てにこやかに麺上げをしていた。

 きつねそばを頼んだ。麺は平打ちでやや太めで、戸隠そばのような出来ばえで驚いた。つゆも上質なもので、その味にほくそ笑んだ。

木型で作る、さけ、たらこ、おかか、うめぼしのおにぎり

 その後、「八兆」が線路高架の再開発で閉店したと聞き、寂しさを隠せないでいたのだが、2006年に今の場所、小田急線の高架を少しだけ南へ歩いた所で再開したと聞いて喜び再び。折をみて訪問している。

「八兆」の創業は昭和50年代の中頃。「末広がりに商売繁盛」という希望を込めて店名を決めたそうだ。