もりそばやざるそばは、冷たい辛汁に冷たいそばである。辛汁というくらいだから、汁の味は濃く、しかも量が少ない。
もっと違うそばを食べてみたいなと思っている方も多いと思う。そんな悩みを解決してくれるのが「つけそば」である。
「つけそば」はたっぷりでアツアツのつゆに、冷たいそば。「つけそば」でそばを食べると、そばの香りがよくわかる。またつゆもそばによくからんで、口の中に出汁のうま味が広がって行く。つゆがたっぷりだから、冷たいそばをつけてもあまりぬるくならない。
そばをちょっとだけつけて食べるのが江戸っ子の粋、というのはもう昔の話。これからは「つけそば」がお江戸の人気メニューだ。
「つけ天そば」で人気に火がついた「おか田」
最近、この「つけそば」に天ぷらをのせた「つけ天そば」を提供する店が増えており、ひそかに人気となっている。
「つけ天そば」は、アツアツのつゆに冷たいそばという「つけそば」の組み合わせに、天ぷらをつゆに浮かべて、食べるというものだ。つゆはいわゆるもり・ざるの辛汁とは異なり、塩分はやや薄めでそのまま飲める程度の塩梅にするのが通例だ。
もともとは、栃木や群馬あたりの北関東の庶民の食べ方だったようで、この地域の人々にとっては馴染みの食べ方かもしれない。横浜にある老舗のそば屋「角平」は元祖つけ天そばの店として有名だ。金町の立ち食いそば屋「そばっ子」でも「かき揚げ天つけそば」として人気となっている。しかし、正式のメニューとなっている店は意外と少ない。
そんな中、最近「つけ天そば」を始めて人気化しているという店がある。神田から昭和通りを渡り小伝馬町方向へ行った日本橋本町にある「立食蕎麦処おか田」である。
「立食蕎麦処おか田」は2008年、文京区春日で開業し、再開発立ち退きで2015年12月に今の場所に移転し再開した。外観も内装も大変綺麗で、テーブル席やカウンター席もあり、老若男女落ち着いた雰囲気でいただける。
そばは生麺で注文後茹で始める。天ぷらは小ロットで随時揚げているので、パリッとした食感が保たれている。つゆはやや甘めの出汁の十分利いたタイプで、万人に受ける味である。
「つけ天そば」(470円)は2016年の秋から始めたそうだ。はじめはあまり出なかったらしいが、徐々に女性ファンなどに広まって人気化している。
山椒粉をどうすべきか問題
「おか田」の「つけ天そば」は、デフォルトでかき揚げ天が付いてくる。最近はお客さんも工夫して、春菊天に変更したり、ちくわ天を追加したりと天種の変化を楽しんでいるという。私が行った時も、季節のふきのとう天を追加している若い女性客がいた。
早速、券売機で「つけ天そば」と生玉子の食券を買い注文してみた。麺茹でをして4分位で登場した。せいろに冷たいそばと春菊天がのり、つゆはアツアツで大きなどんぶりにたっぷり。
春菊天をつけ汁に入れて、ほぐしながら冷たいそばをつけて食べる。
このやや甘いつゆと絡んだ麺が大変結構である。玉子をつゆに落としてさらにそばをつけて食べる。味の変化も楽しいし、天ぷらがつゆにほどけていくのもまた大変いい具合である。
そして、「立食蕎麦処おか田」では薬味に山椒粉が置いてある。これをつけ汁にたっぷり振りかけていただくと、また奥行ある味へと変化していく。山椒粉はそばの薬味には必須だといつも思う。