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「小池百合子でしょうがないか」心理がもたらす「本命不在」という永遠の課題

2017/07/06

genre : ニュース, 政治

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千代田区民として本当に「都民ファーストか?」って考えてみる

 その千代田区、この前区長選があったわけですよ。そこで小池百合子都知事が担ぎ上げたのは、75歳で5選目を目指す現職区長。いやー、新しい政治だわ。旧弊打破してるわ。若いって最高ですよね。

 小池女史がなんでこんな年寄を区長選に担ぎ上げたかって、そりゃもう区議会を抑えている自民党筋と対立をしていて、そのボスがあのドン内田茂だからだって言われておりました。くだらねえ。心の底からくだらねえ。もっと若くてまともな奴はいねえのか。

千代田区長選決起集会での小池都知事 ©三宅史郎/文藝春秋

 でも現職区長が圧勝するわけなんですよね。別に今の千代田区に不満のない区民ばっかりですからね。

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 この辺に都民ファーストの限界があるわけですよ。いっときますが、千代田区民として今の千代田区が最高かって聞かれても、正直なところ「良く分からない」ってのが実態です。だって、千代田区の理想像って何なのか、良く分からんもの。

 ただ、都民ファーストって言われたときに、千代田区の住民こそせいぜい6万人ですよ。でもですな、日中の人口ってなると、霞が関も永田町も丸の内も大手町も神保町も全部よそからやってきた人たちで埋め尽くされ、愛されて80万人超。そのうち半分ぐらいが埼玉とか千葉とか神奈川からえっちらおっちらやってきた、非都民な皆さんばかりです。

いま都民が必要とするようなこと、語ってた人いましたか

 いいですか。都民ファーストといっても都民だけがいい暮らしをしようっていうんじゃなくて、東京都に働きに来る人も、東京都に住んでる人も、いろんな人がいて東京都なので、東京都を含めた近郊県も併せてみんなの働きやすさ、住みやすさを考えないといかんわけですよ。

大敗した自民党 ©杉山秀樹/文藝春秋

 でも、そういう人たちと一体となって、東京をこれからどうしていくのかきちんと考えるのが政治だとするならば、今回の都議会選挙で東京都の未来をきちんと語れた政党なり候補者なりがいましたか。蓮舫代表が来れば安倍政権の批判をし、小池百合子女史はワイズスペンディングとか良く分からないことを言い、いま都民が必要とするような子育て環境や出産補助や通勤地獄や高齢者介護や空き家問題について語ってる人、いましたか。

 千代田区で言うなら、千代田区の住民の10倍以上、他の地域からの働き手がやってきてるわけです。子供がいて共働きの人たちは、愛する子供を地元に預けて夫婦で働いてる。そういう人たちを迎え入れる千代田区民に何を語りかけるべきかって、少なくとも安倍政権批判ではないんじゃないかと思うわけですよね。確かに安倍晋三さんは馬鹿だと思うけど、いま私たちの生活に必要で、こうすればもっと良くなると思うことを聞きたいのであって、共産党が年寄り動員してきて安倍政権を倒せとか御茶ノ水で言われても「代々木でやれ」としか思いません。

 一事が万事そういう感じなんですけど、まあ「都議会に何をそんなに期待しているんだ」って言われるとそれまでなんですよね。石原慎太郎都知事以降、猪瀬直樹さんや、舛添要一さん、そしてドンとして君臨したことになっている内田茂さん以下都議会が、そこまで東京の将来を考えてグランドデザインしていまに至るかと言われれば、そんなことはあんまり考えてこなかったというオチになります。