文春オンライン

「小池百合子でしょうがないか」心理がもたらす「本命不在」という永遠の課題

2017/07/06

genre : ニュース, 政治

マンボウの産卵のような結果と世の理

 また、思い返せば橋下徹さんの大阪維新も、名古屋の減税日本も、途中までは政治の刷新を求める有権者の熱い期待を受けて地方議会で大量の議席を確保し、地域政党として名を馳せ、国政にまで打って出るかというところまでは来ておりました。しかしながら、やはり未熟な組織と素人同然の議員が一時の勢いを得て議席確保しても、いっぱしの政治家になるには時間もかかるし、マンボウの産卵のように多くは途中の逆風やスキャンダルで消えていくことになるのが世の理と言えます。

 今回、選挙の顔として都民ファーストの代表になった小池百合子女史も、地方政治の二元代表制を大事にするという建前でさっさと代表を降りてしまいました。これだって、どういう手続きで、誰と相談して降りたのかは情報公開されておらず、さっぱり分からないわけですけど、そういう都民ファーストが情報開示を政策の柱に掲げて躍進したのは皮肉というほかありません。

ラグビーシャツを着た小池都知事 ©杉山拓也/文藝春秋

シンガポールなみのGDPを持つ大千代田になるのだ

 もしも自分勝手に政治を考えていいとするならば、千代田区で働く80万人の区外の皆さんのことなど考えず、千代田区住民だけで特別区を返上して千代田市になるぞ的な構想もまた出てくることになります。いいですか、本来は地方自治体の財源になるはずの3税(法人住民税、固定資産税、特別土地保有税)を召し上げるための制度が特別区なのです。ということは、千代田区が東京都に納めて分配している3税の総額3585億円あまりは、6万人の千代田区民のために使おうじゃないか、そのためには皇居を擁する千代田区は天皇を象徴とした千代田国になればいいのだ、そうしたらシンガポールなみのGDPを持つ大千代田になるのだ、と言われかねません。

ADVERTISEMENT

 そこまでいかずとも、特別区から抜けて千代田市になれば… という構想は以前からあったわけです。また、東京都も地方交付税交付金を受け取っていないということは、国庫に入ったお金は地方に回って地方が助かっているということでもあります。東京都の浮沈は、まさに日本全体のお金の流れを握っているといっても過言じゃありません。

得意げ ©杉山秀樹/文藝春秋

 勝ち過ぎた選挙の反動で、もしも小池百合子女史がスキャンダルに見舞われることがあったなら、いまの得意げだけど中身のない知事定例会見もグダグダになり、情報公開を叫んだ選挙戦も忘れて天の岩戸に小池女史が引っ込むようになるんじゃないかとすら思います。側近政治まっしぐらです。なんせ、防衛大臣を55日で更迭された人です。そこから周りがうまくお膳立てをして、小池女史も政治家として強かに成長していることを期待するのみなんですが、さてどうなることやら。

「小池百合子でしょうがないか」心理がもたらす「本命不在」という永遠の課題

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー