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辻田 真佐憲
2017/08/06

ドラクエ作曲者による「稲田朋美の歌」は21世紀の政治音楽か?

トランプのキャンペーンソング、金正恩讃歌と比較する

ドラクエ作曲者が作った稲田朋美の歌

「稲田朋美の歌」をご存知だろうか。先日防衛大臣を辞任した稲田の応援歌で、正式なタイトルは「正しい政治」。2008年頃すぎやまこういちによって作詞・作曲された。

 彼女の公式サイトで聴くことができるが、「稲田朋美、稲田朋美、稲田、稲田!」と名前を繰り返す、なんとも味わい深い歌である。

©文藝春秋

 作者のすぎやまは、人気RPGシリーズ「ドラゴンクエスト」の音楽を初代より担当し、その作曲者として広く知られる。ゲームのオープニングを飾る名曲「ドラゴンクエスト序曲」は、だれしも一度は聴いたことがあるだろう。

 そのいっぽうで、彼は保守論壇の常連であり、みずからが支援する政治家の応援歌をいくつも手がけている。稲田の応援歌もそのひとつとして作られたものである。

 そのうえであらためて「稲田朋美の歌」を聴き返すと、なるほど間奏部分にドラクエの懐かしい響きがないではない。現代日本らしい政治と音楽の結びつきがここにある。

右から2番目がすぎやまこういち 「ドラクエ11」の発表会見にて ©時事通信社

アメリカ大統領選挙でも名前を連呼

 もっとも、政治家がみずからをアピールするために歌を活用することはよくある。その典型はアメリカ大統領選挙のキャンペーンソングだ。「稲田朋美の歌」のように、名前を連呼するものも少なくない。

 たとえば、ジョン・F・ケネディ候補のキャンペーン・ジングルは、「ケネディ、ケネディ、ケネディ、ケネディ、ケネディ、ケネディ……」という歌詞ではじまる。

 興味のあるかたは、「Kennedy 1960 campaign jingle」で検索していただきたい。なんども聴いていると、頭がおかしくなってくる。

J・F・ケネディ ©getty

 ここまで極端でなくても、アイゼンハワー候補の「アイクが好きだ」では、「アイクを大統領に」を連呼し、ニクソン候補の「ニクソン・ナウ」では、タイトルと同じ「ニクソン・ナウ」の文句を連呼する。

 どうやら政治家の歌は、名前の連呼と切り離せないらしい。

 ただ、最近の選挙戦では、既存の曲が使われることも多い。2016年の選挙では、トランプ候補がローリング・ストーンズの「You Can't Always Get What You Want」(邦題「無情の世界」)を利用した。

 へたに新しい歌を作るよりも、こちらのほうが一般にアピールするのだろう。日本でも、かつて小泉純一郎が自民党の選挙CMにX JAPANの「Forever Love」を使ったことがあった。

 もとより、既存の曲の利用にはリスクもある。それは、関係者から拒否され、イメージが悪化してしまう場合だ。

 トランプ候補も、ローリング・ストーンズから、楽曲の使用停止を求められた。もっとも、トランプは意に介さず使いつづけ、当選したのだが。

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