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坂崎 仁紀
2017/08/18

夏休みの宿題で人生が決まる?#16 坂崎仁紀の場合

 夏休みのうきうきした気分を一瞬で沈めるのが大量の「宿題」。「宿題はさっさと済ませる」「最後の数日で片付ける」「やらない」と、取り組み方、進め方は様々ですが、大人になってからの仕事のスタイルとほぼ一致する、という説があります。そこで今回「夏休みの宿題」をテーマに文春オンラインの筆者にアンケートをとり、現在の仕事との類似や当時の思い出を伺いました。

◆◆◆

【アンケート項目】

1.夏休みの宿題の終わらせ方と仕事の進め方が類似していますか? ○△×でお答えください。

2.夏休みの宿題の終わらせ方は、次の5パターンのうちどれに当てはまりますか?

 また、現在の仕事の進め方や行動パターンとの類似点、思い出に残っている夏休みの宿題・自由研究もお聞かせください。

(1)先行逃げ切り型(7月中にすべての宿題を終わらせる)
(2)コツコツ積み立て型(ペースを守ってムラなく計画的に終わらせる)
(3)まくり型(夏休みの最後になって大慌てで取り組む)
(4)不提出型
(5)その他(他人任せ、嫌いなものは後回しなど)

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回答者:坂崎仁紀
もりそばが出てくるまでの1時間で学んだこと

1.×

2.(3)まくり型(夏休みの最後になって大慌てで取り組む)

 自分が小学生の頃、夏休みの宿題の終わらせ方は、決まって「まくり型」だった。
『やばい、宿題をやらないと…』と火がつくまで何をしていたかというと、テレビで「コンバット!」をみてぼーっとして、飽きると野山を歩いて稲村ヶ崎海岸に遊びに行った。波にさらわれそうになったり、知らないおじさんに声をかけられたり、刺激的な世界だった。

 ぎりぎりになってから動く行動パターンはなかなか修正されず、高校・大学まで続いた。

 やる気が起きず、白けた生活、何も打破できない日々だった。そんなダメな自分に教訓を与えてくれたのは小説家と立ち食いそば屋のオヤジだった。

 原稿を書くような仕事をするようになってから、仕事に関しては「まくり型」から卒業せざるを得なかった。急ぎの仕事が多く、早く仕上げないとクビになる。特に医療系の原稿は検索や下調べを徹底しないとラチがあかない。

 昭和43年8月初旬、小学校3年の夏休みに宿題の自然観察の自由研究で白骨温泉に行った。泡の湯からすぐの所に平屋の古びたそば屋が1軒あり、父親と食べに行った。「すいません」と3回声をかけると、遠くから声がしてにこやかな80過ぎぐらいのお爺ちゃんが現れた。

 もりそばを頼んだ。すると「ちょっと待ってね」と調理場に消えていった。10分、20分、そばは一向に出てこない。注文をしてからそばを打ち始めていた。仕方なく店中や店前で観察開始。床は土間、壁際には熊の木彫り。そして、外に出ると一面のソバ畑が広がっていた。白い花が一斉に咲きそろい、茎は緑色でそよ風に揺れていた。高原なので春そばを7月に播種したのだろう。初めて見るそばの花は綺麗だった。

 1時間以上待ってもう限界という時に、そばが登場した。想像と違うそばだった。太い食感はほこっとした田舎そばで色は大分黒っぽい。食べたことがない大衆そばだった。

 自然観察の自由研究がどんな内容だったかはもう記憶は曖昧だ。父親はすでに他界し、その古びたそば屋も今はない。まばたきすると一瞬にワープしてその当時の情景が現れ、そしてもう一度まばたきすると2017年の夏に戻る。夏休みの宿題は大変だがほんの一瞬の出来事だ。

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