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瀧澤 信秋
2017/08/21

ビジネスホテルはいま #1  “コモディティ化”に一石を投じる小規模チェーンの挑戦

 ホテル評論家として最も多く受ける質問の一つが「良いビジネスホテル(宿泊特化型ホテル)を見極めるポイント」だ。評論家としての活動を始めた4~5年ほど前から、自著や各種媒体、講演などで「デュベスタイル(羽毛掛布団をボックスシーツで包んでしまうベッドメイクスタイル)」「高機能空気清浄機」「お持ち帰りスリッパ」の3点と触れ回ってきた。

 これらはビジネスホテルというよりも当時高級ホテルで標準装備になりつつあったもので、すべて備えるビジネスホテルは少なく、特に注目したポイントであった。これらも実現するようなホテルを「進化系ビジネスホテル」と名付け、情報発信もしてきた。ところがここにきて、上記3点はすでに見極めるポイントではなくなってきている。観光立国邁進で活況に沸くホテル業界。ビジネスホテルのカテゴリーも活況でハイクラス化が進み、様々なチェーンブランドが展開されており、今やこれらは標準装備になりつつある。

“コモディティ化”する進化系ビジネスホテル

 快適なビジネスホテルが増えた。ビジネスホテルの報道向け新規開業リリースなど頻繁に届くが、どのホテルもカッコイイ。限られた客室面積を有効活用した設計、清潔感も高くインテリアなどスタイリッシュに仕上げられている。もはやお決まりのベッドスローはカラフルで、真っ白なデュベカバーによく映え、枕元のクッションもインテリアの一部。アメニティも秀逸。反面、以前であれば取材に飛んでいったような内容でも“食指”が動かないことが多くなった。

 ハイクラス型に代表される進化系ビジネスホテルは、差別化戦略という側面はもちろんあったのだろうが、出店は続出しており均一感が否めない。もはや進化系といった印象も薄くコモディティ化とも表することができるだろう。ビジネスホテルでもローコストタイプの低料金でサービスを割り切りつつ「不満はあるけどそれなりにいい」は、伝統的なポジショニングとして確立されているが、付帯サービスやスタイル、ステイのクオリティを重視、料金帯もアッパーな新たなスタイルのハイクラスタイプは利用者の期待値も高い。

 宿泊施設のタイプ別に延べ宿泊者数の割合をみると、旅館20.9%、シティホテル15.7%、リゾートホテル14.9%に対して、ビジネスホテルは41.9%と突出している(平成28年観光庁宿泊旅行統計調査)。この割合はここ数年大きな変化はなくビジネスホテルの高い需要が続いている。一方、ある調査によるとビジネス利用は全体の3割程度でプライベート利用が大きな割合を占めてきているという。観光旅行にビジネスホテル利用は定番になりつつある。

 昨今、料金高騰も叫ばれているビジネスホテル。もちろん利益率を重視することは当然である一方、高い料金設定は相応のクオリティを求められることにも繋がる。観光などプライベートでのビジネスホテルの利用者からは「大きな不満はないがどこも同じ……」という声がよく聞かれる。特に進化系・ハイクラスビジネスホテルでそうした傾向がある。かような現況を鑑みるに、高い需要が継続しているにもかかわらず、プライスポジショニングや供給量、類似コンセプトといった消耗戦フェーズに突入しつつあると感じている。

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