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【日本ハム】マーティンの退場寸前劇で見せたチームワーク

文春野球コラム ペナントレース2017

2ヶ月ぶりの連勝

 読者よ、ファイターズが連勝したのである。連勝というのは「○○」だ。盆と正月がいっぺんに来た感じだ。実際には8月14日のソフトバンク戦と16日のロッテ戦だからお盆しか来ていない。いいお盆だ。ナイス盆。他球団のファンはびっくりすると思うけど、ファイターズはこないだ連勝したのが6月18日ヤクルト戦&23日楽天戦なのだ。つまり、交流戦に半分かかっている。交流戦明けてからの勝敗を「見える化」してみよう。

 (6月)○●●●●●○
 (7月)●○●●●●●○●●●●●○●●●●○●●●
 (8月)●○●●●●●●○○

 太鼓の達人か。

「○○」を記念して8月16日の夜、本稿を執筆している。目下、ファイターズは札幌ドームにて「裏天王山」ともいえるロッテとの5位6位直接対決に火花を散らしている。現在2.5差だが、たぶん最後までもつれるだろう。持つべきものは友だ。ロッテは昔から「職員室に一緒に怒られに行ってくれる友達」だ。川崎球場で仁科時成が投げてた(こっちは間柴茂有が投げてた)「日ロ戦争」の昔から特別なシンパシーがある。これからシーズン終盤戦、速報サイトをにらんで「お、よかった、ロッテもつき合ってくれた!」「やばい、ロッテが逆転した」とかワーキャーしたいものだ。

 この「お盆連勝」(と命名した)は久々にファイターズらしい快勝だった。明るい話題にも事欠かない。14日のソフトバンク戦は太田賢吾の勝ち越しタイムリーが見事だったし、9回の大谷翔平、中田翔の「ON砲」アベックホームランも圧巻だった。16日のロッテ戦はレアードのNPB通算100号、増井浩俊の通算100セーブと「偉業の100均デー」(?)であった。新聞も見出しが作りやすかったに違いない。

 が、不思議なもので「ファイターズらしい快勝」を見ていたはずが、強く印象に残ってるのは野球の本筋とは別のところなのである。外国人投手がめっちゃ怒ってるのを見た。14日はファイターズのマーティン、16日はロッテのスタンリッジ。事情はそれぞれ異なるんだけど、どちらも審判に怒っている。大変な剣幕だった。たぶん審判は英語を解さないと思うのだが(大変な剣幕で文句言われて、「ワカリマセーン」みたいなジェスチャーをしてた)、細々した内容はともかく剣幕の度合は伝わる。

来日2年目のクリス・マーティン ©時事通信社

マーティンが判定に激怒し、チームプレー発動

 14日、ソフトバンク21回戦は8回裏、1死1塁でデスパイネを迎えた場面だった。マウンドにいるのはセットアッパーのマーティン。203センチの長身選手で、チーム内の愛称は「キリン」である。去年はグラブに「ザ・キリン」とカタカナで刺繍がしてあった。今年はキリンのイラストが入っている。打たれると割にカッカするほうだけど、普段はセルフコントロールができている。だから淡々と抑えて淡々と引き上げるイメージが強い。

キリンの刺繍が入ったグラブ ©えのきどいちろう

 マーティンはその日、ボークを取られたのだ。それでめっちゃ怒った。シチュエーション自体も「1死2塁でデスパイネ」というピンチだけど、マーティンはそんなことは一顧だにしていない。マーティンはどうやら二重の意味で怒っていたようだ。一つはかねて腹に据えかねていた「日本野球はボークをうるさく取り過ぎる」件。去年の春先、ボークをうるさく取られて、カッとなってマウンドを蹴り上げ、「おお、何だ静止してないっていうのか、そんなら静止してやるから見てろ」とばかりに、一球ごとに10秒以上静止して投げていた。もうマンガみたいで大笑いだった。そこまで感情的になるシーンはその後、見ていない。僕は日本野球に順応できたんだなと思っていた。

 それが久々に今回は怒っていた。マウンドから降りて、球審に大文句を言う。このとき、ファイターズのチームプレーが発動した。まず捕手の大野奨太がマーティンのところに行って、身体を間に入れ、必死にマウンドへ押し戻す。次に中田翔が球審のところへ行き、身体を間に入れ、マーティンから引き離す。ベンチから栗山英樹監督、吉井理人コーチ、野茂貴裕通訳が飛び出してくる。内野の田中賢介、飯山裕志、中島卓也も集まっている。マーティンは完全に度を失っていて、今度は2塁塁審に食ってかかっている。吉井コーチと田中賢介がいいポジション取りで、距離をつくる。2塁塁審がカチンと来てるようなので栗山監督がなだめにかかる。野茂通訳はもちろんマーティンの文句を一切訳さない。

 それで何とか収まったのはファインプレーだと思った。審判に「うちの外国人がすいませんね」をやる役と、マーティンをなだめる役が見事に機能した。審判も大目に見てくれた。僕は退場になるんじゃないかとヒヤヒヤしたのだ。マーティンが二重の意味で怒っていたという、その二番目は「日本に来て5回ボークを取られているけど、そのうち4回はホークス戦だ」というもの。野茂通訳、訳さなくてグッジョブ! チームの皆の協力でマーティンはその回を無失点で切り抜ける。降板してからも3塁塁審と軽く揉めてて、ちょっと気まずい雰囲気だったが、これもすぐ栗山監督が火消しに入り、ベンチ奥へ連れていった。

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