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近藤 正高
2017/08/21

ご存知ですか? 8月21日は野田秀樹主宰「夢の遊眠社」が海外で初公演した日です

劇場が“興奮の坩堝”と化した

 いまから30年前のきょう、1987(昭和62)年8月21日から3日間、劇作家・演出家・俳優の野田秀樹主宰の劇団「夢の遊眠社」が、イギリス・スコットランドのエディンバラ国際フェスティバルで『野獣降臨(のけものきたりて)』を上演した。エディンバラ国際フェスティバルは毎年8月に、世界中からトップクラスのアーティストを招待して行なわれている音楽・舞台芸術の祭典。当時、人気絶頂にあった夢の遊眠社にとって、同フェスティバルへの参加は、結成11年にして初の海外公演となった。上演作に選ばれた『野獣降臨』は1982年に初演され、野田が岸田國士戯曲賞を受賞した同劇団の代表作のひとつである。

 入れ子構造の複雑な物語を現地の観客にも理解できるよう、ディスクジョッキーの小林克也を英語のナレーターに起用したこともあり、公演は好評をもって受け入れられた。公演直前には照明の不具合がわかり、スタッフを心配させたが、それも本番では問題なく作動する。劇団で制作を担当した高萩宏は後年、エディンバラでの初日を振り返り、冒頭以外「その後についてはカーテンコールがすごかったことしか覚えていない、外国人観客のノリが良いのと、はるばる見にきた日本人観客もノッているので拍手はなかなか終わらない。役者も感激しているし、劇場中がまさしく興奮の坩堝(るつぼ)だった」と書いている(高萩宏『僕と演劇と夢の遊眠社』日本経済新聞出版社)。最終公演は、現地5紙に出た劇評の影響や口コミの評判もあって満席となる。帰国後には、全国各地をまわる凱旋公演が行なわれた。

©文藝春秋

 夢の遊眠社は1992(平成4)年に解散、野田秀樹はロンドン留学を経て93年、新たに演劇制作会社「NODA・MAP」を立ち上げる。2006年には英語で書き下ろした『THE BEE』(野田とコリン・ティーバンによる共作)をロンドンで初演、09年には演劇による日英交流への貢献から野田に名誉大英勲章のオフィサー章(OBE)が贈られた。今年11月からは、野田がイギリス人俳優と共演する『表に出ろいっ!』の英訳版が、東京を皮切りに世界各地で公演される予定である。

名誉大英勲章のオフィサー章を受章し、ディビッド ウォレン駐日英大使と握手する野田秀樹 ©共同通信社
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