いま新聞販売店が新型コロナウイルス禍で大打撃を受けている。
外出自粛の影響で、食事のデリバリーや通信販売など宅配の良さが見直されたが、その宅配を戦前から貫いているのが新聞のはず。にもかかわらず、経営的にダメージを受けているのは、外出自粛の影響で、スーパー、パチンコ店、ホームセンターなどの「折り込み広告(ちらし)」が大幅に減少していたためだ。
新聞を購読している読者なら、その変化を実感しているだろう。特に5月は折り込み広告が数枚しかない日も多かった。
読者からすれば折り込み広告は“新聞のオマケ”かもしれない。しかし、新聞販売店にとって、折り込み広告から得る手数料は、なくてはならない貴重な収入源だ。
折り込み広告は、スーパーなどのクライアントが1枚何円と決められた金額を枚数に応じて新聞販売店に手数料として支払っている。新聞販売店の売り上げは、主に読者からの購読料とこの折り込み広告手数料だ。「購読料」が読者の減少で下げ止まらない中、折り込み広告手数料の収入に占める割合は大きくなる一方なのだ。
コロナ禍は奇しくも、極めて厳しい状況にあった新聞販売店の“アキレス腱”を射抜いたと言える。
5月の折り込み広告は「昨年の4分の1」
「生き残る意志を強く持って。そういう販売店は決して見捨てないから」。そんな新聞社の営業担当者の決まり文句を空疎に感じるというのは、中部地方の朝日新聞系統の販売店所長だ。
この店では売り上げの約20%が折り込み広告手数料だった。その折り込み広告収入が、昨年4~5月は月180万円ぐらいあった。それが今年4月は90万円を切り、5月には4分の1の45万円程度にまで減少してしまったという。
所長によれば、朝日新聞社からはコロナ対策として、5~7月まで新聞1部当たり月200円の補助金が支給される。例えば、2500部を購入している販売店であれば、計50万円の補助金となるが、折り込み広告の減少を埋めるには遠く及ばないのだ。
「本社(新聞社)は販売店を見捨てないと口では言うが、このままでは夏ごろから間違いなく販売店の廃業が相次ぐだろう。コロナ不況で企業は広告宣伝費を削るだろうから、感染拡大が収まったとしても、折り込み広告がコロナ前に戻るとは思わない」(朝日系所長)