5月27日、政府は、新型コロナ危機に対応する「第2次補正予算案」を閣議決定した。国の財政支出を表す「真水」が約33兆円で、「1次補正予算」を上回る巨額なものとなったが、すでに決定済みの融資や給付も遅れているなかで、まずは迅速な執行が課題だろう。休業要請でダメージを受けた企業や個人は、一刻も早い支援を必要としているからだ。
〈問題は、なぜこうした効果の薄い経済対策ばかりが立案されるのかである。
その背景には、日本経済に対する政府の誤った認識がある。この認識をあたらめないかぎり、今後も同じような失政が繰り返される。コロナとの戦争が長期化するのはほぼ確実であることを考えると、政府の認識ギャップは致命的だ〉
こう指摘するのは、経済評論家の加谷珪一氏だ。
なぜ政府の経済対策はピントがズレているのか?
〈これまで政府が行う経済対策というのは、公共事業や助成金など、企業に対する支援が中心だった。こうした支援策は、製造業の輸出とそれに伴う設備投資によって経済を成長させる「輸出主導型経済」の時代にはうまく作用した。
ところが、今の日本は消費で経済を動かす「消費主導型経済」にシフトしており、従来型の経済対策は効果を発揮しにくい。
日本の経済構造が根本的に変化しているにもかかわらず、その現実が政府関係者に共有されておらず、結果として、立案される経済対策の多くがピントのズレたものとなっているのである〉
安倍政権は、「経済政策の成果」を誇り、長期にわたって政権運営を続けてきた。とりわけアベノミクスは、大規模金融緩和で輸出企業に有利な「円安」を誘導し、大企業(輸出企業)中心の「財界」の支持も得てきた。ところが、そもそも「日本は『貿易立国』だ」という認識自体が誤っているというのだ。
日本はもはや「輸出大国」ではない
〈読者の皆さんの中にも、「製造業の輸出こそが日本経済を支えている」と考える人が多いかもしれないが、現実はだいぶ異なる。
全世界の輸出の中で日本が占める割合は4%を切っており、ドイツ(7.5%)や中国(10.6%)の半分、もしくはそれ以下の水準にまで落ち込んでいる。残念なことではあるが、世界市場において日本はもはや「輸出大国」とは見なされていないのが現実である〉