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レビュー偽装も発覚「性犯罪シッター事件」の裏でキッズラインが見逃していた“シッター不適格者”たち【関係者59人が告発】

2020/07/09
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トレーニング回数に応じて“ポイント”がもらえる

「私個人としては、シミュレーショントレーニング(オンラインでの研修のこと)だけでデビューされるのは不安なので全て実地で行っていました。ただ、トレーニングをすると、実地であろうがシミュレーションであろうが、キッズラインの利用時に使えるポイントが付与されるんです。

キッズラインのシミュレーショントレーニング資料。シッター希望者はこのような質問に対して答え、ママトレーナーがその評価をキッズラインに報告する

 回数が増えるともらえるポイントが大きくなることもあり、月8回ぐらいを目安にトレーニングをしてほしいと言われることもありました。手間のかかる実地のトレーニングよりも、オンラインで済ませてしまうママトレーナーの方も多かったのではないかと思います。

 基本的にシミュレーショントレーニングは近くにママトレーナーがいない場合の措置だと聞いていたのですが、2019年9月に、サポーターさんと実地のトレーニングの日程調整をしていたら、途中で『他のママトレーナーさんからオンライントレーニングを提案されたのでそっちにします』とお断りをされることがありました。

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 キッズラインに問い合わせると、実地の可能なエリアにママトレーナーがいたとしてもサポーターが希望すればオンライントレーニングに変更も可能だと言われました。サポーターさんも交通費がかからなかったり、移動の手間が省けたりで、オンラインを希望される方も少なくはなかったんだと思います」

キッズラインのシミュレーショントレーニング資料

 2019年春に選考を受けた、シッターJさんは次のように話す。

「私の家の近くにはトレーナーとなるママさんがいないため、オンラインで研修を受けました。オンライン研修ではテレビ電話で社員さんから『ご家庭に到着したらまず何をしますか?』『この時はどうしますか?』などの質問をされ、それに答えていきました」

 そして、オンライン研修は同時に複数のシッター希望者に対して行われたようだ。

「私の他に5人くらい一緒に研修を受けていたので、順番に指名されて答えていくような形でした」(同前)

 従来の実地研修では、1人のシッター希望者がママトレーナーの自宅で研修を受けていた。しかし2020年3~4月には、1人のトレーナーが同時に5~7人のサポーターに対してオンライングループ研修を実施していたようだ。

  ママトレーナーKさんは「運営側からは『シミュトレは慣れてくれば何人か同時にすることも可能です。実際に4人ぐらい同時にされているトレーナーさんもいらっしゃいますよ』と言われました」と証言。また、グループ研修を担っていたトレーナーのうち1人は今年3月まで社員であったことも確認している。

 キッズラインの主導により、“効率化”された実習で2020年3月と4月は1ヵ月のデビュー人数は、外から確認できるサイトだけでも月300人を超える(男性シッター停止後に発表されたデータのため、実際のデビュー確定人数はこれより多かったと思われる)。

筆者が作成したサポーター新規デビュー数。縦軸は人数

初回レビューに「★は5つ満点の採点」を指示

 オンライン研修を請け負うママトレーナーは、研修後に研修結果を本社に送信し、最初の利用者が依頼の際に参考にする唯一の情報である「初回レビュー」も記入することになっている。この「初回レビュー」について、ママトレーナーはキッズラインからこのような指示を受けていた。

《一般の親御様がご覧になる1件目の口コミです。
【注:トレーニングと分かる表現はお控えください】

・そのサポーターのおすすめポイント
・具体的なエピソード

 など、サポーターさんの良さが伝わりやすく、他の親御様が予約したくなるようなコメントをお願いします。

※合否に関わらず、サポータープロフィールページに即時反映されます。
 ★は5つ満点の採点をお願いします。
※ただし、明らかに合格するには不適格と感じられる方には多くの文章も難しいと思いますので、ご挨拶程度の簡単な文章でも差し支えありません。》

初回レビュー指示