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山田 隆道
2017/09/01

【阪神】秋山拓巳、広島に隠している説――ここまで広島戦登板ゼロの謎を考える

文春野球コラム ペナントレース2017

広島ファンから耳にした、阪神の不気味なところ

 先日、広島ファンの方々が集う某トークイベントに、ひょんな縁から阪神ファンの私がゲスト出演させていただいた。現在セ・リーグ首位を快走する広島について、2位・阪神のファンはどう見ているのか――と、まあ、こういう狙いである。

 普段の私はあまり広島ファンの方々と接する機会がないため、非常に新鮮で有意義な時間となった。みなさん、今季の広島のリーグ優勝こそ信じているものの(このイベントの時点ではもっとゲーム差が開いていた)、その後のクライマックス・シリーズ(以下CS)については一抹の不安を抱えているという。中でも阪神と3位・DeNA(8月31日現在)なら、阪神のほうがCSのファイナルステージに上がってきてほしくない、という意見が多かった。今季ここまでの広島の対戦成績は、対阪神が10勝9敗1分、対DeNAが9勝11敗と、数字の上ではDeNAのほうが難敵に見えるのだが、会場にいた広島ファンの多くは、阪神の“ある部分”に不気味さを感じていたわけだ。

 その“ある部分”とは、阪神・秋山拓巳の起用法についてだ。今季の阪神はどういうわけか、いまだに秋山を一度も広島戦に先発させていないのである。

今季、ここまで一度も広島戦に先発していない秋山拓巳 ©文藝春秋

秋山拓巳が広島戦に一度も先発していないのは偶然なのか?

 ご存知、ランディ・メッセンジャーが故障離脱した今、この秋山は阪神先発陣の中でもっとも頼りになる投手だ。今季ここまで12勝4敗、防御率2.72。入団以来、大型右腕として期待され続けていた素質が、プロ8年目でようやく、本当にようやく開花した。

 ただし、そんな秋山はここまで中日戦6試合、ヤクルト戦6試合、DeNA戦3試合、巨人戦2試合、他は交流戦で西武、オリックス、ロッテを相手に1試合ずつ先発しているものの、広島戦は0である。逆転優勝を目指したいはずの2位・阪神が、自軍の頼れる主戦投手を首位・広島にぶつけないのは、確かに少し不思議なことのように思える。

 もちろん、シーズン序盤の秋山は週の前半(火水木)の三連戦に先発するローテーションで回っていたため、そこで阪神と対戦がなかった広島相手に先発しないのは自然なことであった。しかし、オールスター休み明けの7月17日(月)からは、今季初めて週の前半に組まれた阪神vs広島の三連戦が始まったのだが、秋山はオールスターで登板しているためか、そこでも先発することはなく、以降は週の後半(金土日)の三連戦に先発するサイクルに変わった。そうなると、8月に二度あった阪神vs広島の三連戦はいずれも週の前半に組まれていたため、また秋山が短期の故障離脱に見舞われたこともあったため、結果として一度も広島戦に先発することがないまま、現在に至っているわけだ。

 こうやって秋山の登板サイクルを振り返ってみると、彼の広島戦先発0は偶然の産物にも見える。しかし、その一方でペナント争いの佳境では意図的にローテーションを崩してでも、ライバルチームに主戦投手をぶつけることも珍しくないだけに、それをしない阪神にはなんらかの狙いがあるのかもしれない、と勘繰りたくなる気持ちも理解できる。

 現在、首位・広島と2位・阪神のゲーム差は5.5。8月1日時点では11ゲーム差も開いていたのだが、ここにきて広島の不調と阪神の好調が際立つようになり、わずか1ヶ月で大きく差が縮まった。今や広島の優勝マジックも消滅し、阪神の追撃ムードがさらに高まってきた。残り試合での逆転優勝、そんな奇跡が本当に起こるのか。

 そう考えると、冒頭の広島ファンのみなさんは、ますます秋山に不気味さを感じていることだろう。もしや阪神はシーズン終盤の首位攻防戦、いわゆる天王山のために、あえて秋山を広島に隠してきたのではないか。あるいは、たとえリーグ優勝は広島にさらわれたとしても、その後のCSでの下剋上を虎視眈々と狙っているのではないか。

 今季の秋山は変わった、これまで伸び悩んでいた秋山とはまるで別人だ。そういう評判は広島にも十分すぎるほど聞こえているはずだけに、余計に秋山への未知の幻想がふくらんでいてもおかしくない。一般的に、初対戦の投手と打者では投手のほうが有利だと言われている。今季の急成長した秋山が過去7年間の彼とはまったく別の投手だと仮定するなら、そういう初物の投手との対戦、しかも今季リーグトップクラスの成績を残している投手との初対戦は、広島打線や広島ファンにとっては脅威なのだろう。

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