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山田 隆道
2017/09/08

【阪神】横田慎太郎の闘病と、球団とマスコミのファインプレー

文春野球コラム ペナントレース2017

 横田慎太郎、ひとまず本当に良かった。脳腫瘍の寛解とは完治ではないらしく、だからまだまだ安心できるわけではないのだが、それでも順調に回復して虎風荘に帰寮したことに意味がある。前向きにリハビリできる状態になったことに心の底から喜びを感じる。

 これは一介の阪神ファンの感傷にすぎないのだが、私にとって横田はもっとも成長を楽しみにしていた若虎の一人だった。高卒1年目から大型外野手として期待され、3年目の昨季は開幕スタメンをもぎとった。その後は壁にぶつかり、再び二軍で鍛錬を積むようになったものの、その高い身体能力と奇妙なまでの意外性に私はすっかり魅せられた。横田はまちがいなく、金本阪神のいわゆる「超変革」の中心メンバーだった。

ユニホーム姿がグラウンドに映える、横田のスケール感と華

 横田はルーキーのころから、グラウンドでの姿がやけに目立つ選手だった。187センチの長身に加えて、肩幅が広く、胸板も厚く、下半身もどっしりしているから、柵の外から多くの選手たちを眺めていても、一発で横田を発見できる。ありていに言えば、ユニホームが似合う、あるいはその姿がグラウンドに映える、そんな際立った存在感があった。

 横田は2年目になると体がさらに大きくなり、3年目もまた、ひと回り厚みを増した。だから私のような素人ファンには実に成長過程がわかりやすく、そこも魅力的だった。

 横田は打撃練習では首脳陣の指導に首をかしげる場面がたびたび見られるなど、まだまだ時間がかかりそうな印象を抱かせる。しかし、いざ実戦になると不思議と快打を連発するからおもしろい。決してスマートな打ち方ではなく、いわゆる不器用さを感じさせるものの、なんとなく野性味があって要所で好結果を出したりする。

 横田は完成度や技術面では若虎たちの中で突出しているわけではないものの、スケール感という意味ではとてつもなく大きな可能性を感じさせる。これで父がかつてロッテなどで活躍した、首の太い左の巧打者・横田真之なのだから、そりゃあ期待して当然だ。

脳腫瘍が寛解した横田慎太郎 ©時事通信社

横田の正式な情報がまったく発信されなかった半年間

 だから私は今年2月の沖縄・宜野座キャンプを訪れた際も、横田のことを特に楽しみにしていた。彼がどれだけ成長しているのか、彼の体がどれだけ大きくなっているのか、そんな期待に胸をふくらませて、メイン球場まで小走りで向かったことを覚えている。

 ところが、件のキャンプではその横田の勇姿を満足に見ることができなかった。ちょうど私が宜野座に入った翌日に、横田は頭痛によって帰阪したという知らせを聞いた。

 果たして、その後はみなさんもご存知の通り、横田についての続報は約半年間にもわたってまったく発信されなかった。ファンの間では消息不明などという穏やかでない言葉が飛び交い、さまざまな噂や憶測がネット上にあふれることになった。