九州・博多で暮らす、92歳、現役の料理家。料理の技術だけではなく、季節の食材や使い心地のよい道具といった「ほんもの」の大切さを伝えるその料理教室は、教え子たちからひそかに「人生塾」と呼ばれている。そんな著者の教えを、温かな言葉を軸にまとめた本の売れ行きが好調だ。
「今は仕事も家事もがんばることを求められる時代で、上手く両立できずに悩む人も多いですよね。タミ先生は早くにご主人を亡くされ、戦後の厳しい時代にシングルマザーとして双子のお子さんを育てられた。そんな大変な思いをされた方が、悩みを相談した方に『がんばらんでいいの』と声をかけられる。ホッとしますよね。そういう、辛いことがあっても思い出すと元気になれる、お守りになるような先生の言葉を集めた本にしたかったんです」(担当編集者の馬塲智子さん)
教室には、著者の話を楽しみに50年近く通い続けている人、はたまた親子2代、3代で教わっている人もいるそう。著者の人徳は、文章からも伝わってくる。
「歳を重ねると何かと人付き合いも難しくなるものですが、先生の心はいつも開かれているんです。一人暮らしをされているお宅には、今でもいろいろな方が毎日のように訪ねて来られるとか。おしゃべりがあって美味しいご飯があると、温かい場所が生まれる。そういうのっていいなと、この本を通じて、あらためて感じました」(馬塲さん)
2017年7月発売。初版9000部。現在5刷7万4000部