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なぜ男の10人に1人が「産後うつ」になるのか

政府の「イクメン」推進は根性論にすぎない

2017/09/25
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政府の「イクメン」推進は根性論

 一方で「イクメン」ブームの高まりもあり、国も父親に対して育児や家事をするよう努力を求めている。内閣府が「イクメン」を推進するポスターでは、日本の夫の家事・育児時間がスウェーデンの201分、ノルウェーの192分などと比較して67分と短いことが示されている。ポスターでは「男性の暮らし方・意識が変われば日本も変わる」、「日本人男性も世界レベルの家事メンに」として、2020年までに150分まで、つまり男性個人の努力によって現状より1時間23分伸ばすことが目標とされている。

 しかし、そんなことは可能なのか。OECDの調査では、2016年の日本人1人当たりの年間労働時間は1713時間、ノルウェーは1424時間、スウェーデンは1621時間。そもそも日本の労働時間はこれらの国と比較して長い。総務省の社会生活基本調査(2011年)で男性の一日あたりの「自由時間」を見るとノルウェーやスウェーデンに比べて1時間以上短かった。そもそも日本は労働時間が長く、家事や育児に使える時間が少ない国なのだ。

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 特に昨今では、ブラック企業問題や過重労働による自殺などが取り沙汰され、政府が働き方改革に乗り出すほど日本の長時間労働は社会問題化している。

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 竹原室長は、「今の父親たちは、長時間労働が当たり前で帰宅時間が深夜近い人も多く、帰宅すると育児で疲れた妻を気遣って家事や育児をし、寝るのは深夜でまた早朝から出勤と、過労に近い状態です。ここからさらに家事・育児の時間を増やそうとすると、追い込まれて体調や心のバランスを大きく崩す人が増えてもおかしくありません。社会の問題が、父親個人の努力や認識の問題という風にすり替えられていると思います。まずは長時間労働の改善が喫緊の課題です。それが結果的に母親へのサポートにもなると思います」と話す。

 労働環境の改善は、個人のためだけでなく育児サポートや少子化対策につながるという意識で、国や企業が意識改革をすることも必要だろう。