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元SMAPの3人めぐって…公正取引委員会がジャニーズ事務所を「注意」した真意とは

杉本和行元公取委員長インタビュー #1

note

個人データを扱うプラットフォーマーも独禁法の対象に

――プラットフォーム規制についても独禁法の解釈を広げたように思います。従来はBtoBの企業間取引にのみ適用された独禁法を、BtoCの企業と個人消費者の取引にまで広げる。そうすることで、個人データを扱うプラットフォーマーも独禁法の対象としました。

杉本 GAFAを代表とする巨大プラットフォーム企業というのはウィナー・テイクス・オールの世界で、寡占や独占が発生しやすいんですね。人がつながればつながるほど使用価値が高まっていくネットワーク効果が発生する場所ですし、限界コストがゼロに近いため、必然的にどんどん大きくなっていくからです。こうした企業の動きに対応しながら市場秩序を維持するのは国際的な潮流ですから、日本が歩調を合わせるのは当然のことだと思います。

 そうした前提の中で、巨大プラットフォームと私たちというのは、もう、切っても切り離せない関係になっています。私なんかも毎日グーグル検索なしには過ごせなくなっていますし、方向音痴だから出かけるたびにグーグルマップを開いている。まさに「グーグル先生」に頼りきりです。アマゾンにしても、家内が注文した商品の段ボールの片付けや充填材の処分が私の家事の大部分であったりと、生活の一部です(笑)。SNSだって人にとっては生活の一部でしょう。

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©️iStock.com

 かように消費者は多大な利益を受けているわけですが、その代わりに私たちは膨大な個人データをプラットフォーマーに渡しています。それをもとに企業は広告収入を得ています。ここにおいて、消費者とプラットフォーム間には「取引」の関係が成立していると考えることができます。つまり、BtoCの関係であっても、独禁法が適用できる土壌があるのです。

各関係省庁と公正取引委員会の連携が必要に

――実際にはどんな場合が考えられるのでしょうか。

杉本 例えばドイツのカルテル庁はフェイスブックが、ユーザーが第三者のサービスを利用した際に生じるデータを消費者が明確に認識しないまま収集・利用できるようにしている行為について、「支配的地位の濫用」だとして、データ収集に制限をかけるべきではないかとの判断を示しています。