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《3割を打った》財務省職員が口にした「プライドを含んだ隠語」が物語る“霞が関の働き方改革”の難しさ

異常すぎる「378時間残業」発覚

2021/03/19
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残業378時間の衝撃

 コロナウィルスへの政策立案をする内閣官房の対策室、通称“コロナ室”で、ある職員の1月の残業が378時間に及んだことが明らかになった。想像してほしい。平日ほぼほぼ徹夜をして土日も1日中働かなくてはこんな時間にはならない。長時間労働を常態化している霞が関からも、「非人道的だ」という声が上がるほど異常な長さだ。

 折しも、サービス残業が横行している中央官庁の実態が明らかになり、それが官僚を目指す若者の減少、さらに官僚になった若者の流出につながると問題視される中で、霞が関の働き方改革は急務となっている。

自らが管轄する「コロナ室」で378時間もの残業をした官僚を出してしまったことを西村康稔経済再生相は謝罪した Ⓒ時事通信社

 フォロワー数230万人近くを誇る河野太郎大臣はTwitter上で、今年の2月から残業時間を厳密に反映した給与が支給されると投稿した。霞が関のサービス残業を問題視した河野大臣は、1月に適切な残業代の支給を閣僚に要請し、その後の最初の国家公務員給与の支払いの日だったのだ。

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 サービス残業をなくすという改革には、当然、私も賛成だ。だが「これで手取りが増えた、万々歳」と喜べるほど単純なものではない。残業代を支払うという改革はスタートラインであっても、決してゴールではないからだ。

 それはそうだろう。「378時間残業している人もいます。でも、残業代は全額払ってますから!!」とドヤ顔をされたとして、誰が「よくやった」と手放しで称賛できるだろうか。

サービス残業から闇残業に?

 残業時間378時間を筆頭に、今年1月のコロナ室の平均残業時間は122時間とも報道された。そう、サービス残業の実態が「見える化」されることで、課員全員が月100時間超の残業をする部局の存在も明るみに出る。そのような事態は決してあってはならない。ということで、残業時間そのものを減らすことが次なる要請となるだろう。

 だが、残業代を全額支払う改革に比べて、残業そのものを減らす改革はより困難であると、現役官僚は語る。

 まず官僚にとって、仕事量を自らの才覚だけでコントロールすることはほぼ不可能だ。ひらめきという名の政治家の思いつきによって降ってくる仕事の数々。もちろん、官僚が政治家に忖度しすぎたきらいはあるが、メンツがスーツを着て歩いているような永田町の住人の多くは、要請をスルーされれば「軽んじられた」と激昂する。そんな永田町を相手に、霞が関に「拒否権」はないという。