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「佐藤って、去年のボーアみたいや」――阪神ファン少年野球日記①

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/04/10
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「佐藤って、去年のボーアみたいや」

 帰りのクルマでKコーチがテレビをつけると、大阪ドームがうつった。阪神対中日の二回戦がはじまったばかりだ。

 福留孝介が二塁打。錦ジュの正捕手K西選手「マジ、阪神のとき打ってやあ。チェンジアップで三振ばっかしてたのに」。「キャプテンていま大山なん」と、三塁手のH谷川選手、「糸原のままでよかったのにな」。小学生にして、銭湯のおっさんたちがむかし白黒テレビみあげて愚痴ってたまんまだ。

 大山悠輔が見逃したきわどい球がストライク。これをきっかけに、この日の試合の反省と、これからの展望に話題が飛ぶ。「大会の優勝まで、何回勝たなあかんのん」「6回」「サンズ五番なんか、四番かと思った」「コーチ、球数制限って、いつからですか」「佐藤って、去年のボーアみたいや」

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 シートのひとひが頭をあげ、「ぼく、いま、何分くらい寝てた?」といってみな爆笑。けれどもその10分後には、車内の選手たち四人全員が、背もたれに頭をつけ、シートで斜めにずり落ちながら、すうすうと小学生らしい寝息をたてていた。寝る選手は育つ。

©いしいしんじ

 少年野球は京都発祥。軟球も京都のスポーツ屋さんが発明した。タイガースで活躍する選手たちも、小学生のころはみな、試合のあとすうすう居眠りして帰るこどもだった。野球の磁力が、世代、性別、国籍をこえ、グラウンドに立つみんなをつないでゆく。

 翌日の4日日曜日、中京少年野球振興会リーグ戦の初戦、錦ジュは4回を14対0のコールド勝ち。同じ日の午後、タイガースは近本の先頭打者ホームラン、陽川のタイムリーなどで3対1の快勝。両チームとも今シーズンはほぼ理想的な立ちあがりをみせている。

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