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「ホームレスにはなりたくない」「首をつるロープを買ってきました」…コロナ禍で社会福祉士の元に寄せられる“相談”の実態

『コロナ貧困 絶望的格差社会の襲来』より #1

2021/09/30
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 それなら男性に養ってもらえばいい。そう考える人たちがいまだにいる。もしそれが可能だったとしても、女性が生きてゆくための代償に、男性に「性」を差し出すことになってしまう。確かに、これまで日本の社会では「家族」が経済的に困窮することを防ぐ大きな役割を果たしてきた。しかし今日では、各世代で単身者(ひとり暮らし)が急増しており、家族がこれまで果たしてきた役割・機能を行えなくなっている。

 世界経済フォーラム(WEF)が経済、政治、教育、出生率や健康寿命などから男女格差を算出する「ジェンダーギャップ指数」において、日本は2016年の111位から順位をさらに下げ続けており、コロナ禍の2021年4月の発表では156カ国中120位と、G7中最下位を更新した。

日本の女性参画の遅れ

 閣僚や企業の管理職に女性の登用が少ないことも、かねてから指摘されてきた。安倍政権(当時)の目玉だった「女性活躍推進法」は、女性を管理職に登用することを推進したが、戦前から続く女性差別を振り返り、総括することは行われなかった。過去の検証と反省がなければ、同じことはまた起こる。2020年9月16日に発足した菅義偉新内閣では女性閣僚は2人で、3人だった直前の安倍内閣から1人減った。

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 他の国々がダイバーシティー推進に向かっているなか、日本では2021年2月、多様性と調和の重要性をコンセプトに掲げた東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視の発言をして辞任するなど、社会での女性参画の遅れを世界中にさらしてしまった。

 森会長が辞任に至ったのは、複数の海外メディアで女性蔑視発言が取り上げられ、国内外から非難が殺到し、さらにIOC(国際オリンピック委員会)の「森会長の最近の発言は完全に不適切であり、IOCのコミットメントと五輪アジェンダ2020の改革に矛盾している」との声明が決定打となった。外圧によってではあるが、女性差別が問題視されて是正策が講じられたことは、日本がオリンピック開催国になった「メリット」だったとも言える。

〈事例〉ロープを手にSOSメールを打つ20代失職女性

〈家賃が払えないので明日出て行かなければならない。ホームレスにはなりたくないので首をつるロープを買ってきました〉

 南美加さん(仮名・22歳)からメールが届いたのは、2020年12月のことだった。こういう時は「思いとどまりましょう」といったメールではなく、まず所持金を聞くなど、現実的な返信をする。

〈お財布に4000円くらいです〉

〈仕事はどうされていますか〉

〈カフェで働いていたんですが、コロナで雇い止めにあいました〉

 首都圏のアパートにひとり暮らしだった。カフェで働けなくなった後、風俗店に移ったのだが、そこも感染症拡大で閉店になり、大家さんに待ってもらっていた家賃も、とうとう払えなくなったのだという。