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山本 一郎
2017/11/16

「日本のリベラル」は科学で再興されるべき

右も左も内輪で固まるのはやめよう

 先日、ジャーナリストの江川紹子さんが興味深い記事を掲載していて、ふんふんと読んでいたんですよ。なるほど、そういう考え方もあるのかという意味で。

「リベラル」の逆は「保守」ではなく……歴史に耐えるものさしで、中島岳志さんと現代日本を読み解く政治学(江川紹子) - Yahoo! ニュース個人

 もちろん、記事の中身は東京工業大学の中島岳志教授の話を聞く、という形になっているのですが、日本における「リベラル」の基本は自由と寛容としたうえで、そのリベラル政党としてドーンと立憲民主党や共産党を置き、その対立軸は「保守」ではなく「権威主義」だと断定して、自由民主党や公明党、希望の党、維新の会を権威主義で自己責任を追求する政党だと位置づけているわけですね。かなり議論の分かれる分類ではないかと思います。

立憲民主党 枝野代表 ©釜谷洋史/文藝春秋

「リベラルとは何か」をめぐって

「リベラルとは何か」という定義までは正しく、日本社会が追求するべき理想としてのリベラルを持ち上げるところまでは分からないでもないのですが、その定義にそって日本政治を分析するところで共産党までリベラル政党に押し込んでいて、自民党や公明党は倒すべき権威主義政党だと言い切るような内容になっているようにも見えます。

 もちろん、いまの自民党政治を見て権威主義的でないとは思いません。野党の質問時間削ってどうするんだとか、憲法改正の自民党私案はいくらなんでもゴミすぎるだろとか、突っ込みたいところは山ほどあるのが問題です。ただ、本当に権威主義的なら安倍ちゃんはバンカーで転んで世界から爆笑されても放置するような真似はしません。どう考えても中国共産党やトランプさんのほうがよほど権威主義的です。我が国の共産党なんか志位和夫さんは優れた人格とは聞き及ぶものの2000年からずっと党委員長ですよ。これのどこがリベラルなのかという話ですし。立憲民主党も小池百合子さんが「排除いたします」とか言わなかったらみんな仲良く希望の党の一員ですよね、衆議院選挙直前の民進党の両院総会では満場一致で希望の党への合流を承認していたんですから。

 おそらく、リベラルかパターナルかという分類は、男か女かという線引きよりもはるかにグラデーションがあるというか、政党や議院において「この問題では権威主義的な対応をしているけど、全体的に見て自由主義者の傾向だ」ぐらいのニュアンスの話でしかないように思うわけです。

小池百合子氏 ©時事通信社

選挙互助会のレベルを超えないサークルのノリ

 結局のところ、いままでで言うところの与党サイドも野党・左派サイドもご都合主義的な内輪の論理を繰り返し、選挙互助会のレベルを超えないサークルのノリで政治をやっている部分が感じられます。賛同しない政治勢力や政党に対して「お前は強権的なパターナリズムの体現者だ」みたいな批判をするのは、人気取りが至上命題の現代民主主義の実情にあって「あいつはポピュリストだ」というレッテル貼りとそう大差ない内容になってしまいかねません。その点では、実際に中島さんが声高に「自民党や公明党は権威主義だ」と叫んだところで、衆議院選挙が与党の大勝で終わった後はさらに安倍晋三総理の支持率は回復しています。内閣支持率なんて水物だとは思いますが、それでも戦後3位の長期政権を実現した安倍内閣がいまなお5割前後の国民に支持されているというのはどう判断するのでしょう。国民は長い間騙され続けているということなのでしょうか。あるいは、国民の半数は権威主義者だ、ということでしょうか。