安倍晋三 首相
「希望をやり過ぎた。立憲より希望が第一党のほうがよかったのに」

『週刊文春』11月2日号

 名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。22日に行われた衆院議員選挙は、自民党が追加公認を含めて過半数を大幅に超える284議席を獲得。公明党と合わせて、改憲発議に必要な310議席を上回る圧勝劇に終わった。

「安倍一強の驕り」と繰り返し批判されてきたこともあってか、NHKの開票速報番組でも「今後も謙虚に誠実に結果を出していくことに全力を尽くしていきたい」と表情を引き締めていた安倍首相。ただし、党本部の総裁室から萩生田光一幹事長代行と一緒に出てきたときは2人揃って満面の笑みを浮かべていた(『週刊新潮』11月2日号)。

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 自民党大勝という選挙結果は、希望の党と小池百合子代表のオウンゴールに救われたという見方が大きい。実際、各紙の世論調査では首相の続投を「望まない」とする回答は軒並み50%を超えている。自民党の佐藤勉元総務相は、「(選挙前は)首相が一番嫌われていたけど、小池さんが追い抜いて首相が二番になった。小池さんには感謝しないといけないね」と選挙を総括した。「安倍ワーストが小池ワーストに」なったというわけだ(『週刊文春』11月2日号)

臨時閣議に出席した安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相

 失速する希望の党を尻目に、野党第一党に躍進したのが小池氏に「排除」された側の立憲民主党だ。それに対して不快感を隠さないのが安倍首相。選挙戦最終日には、周囲に「メリットが乏しい」と反対された秋葉原(東京1区)での街頭演説を強行したが、これは立憲民主党の海江田万里氏を批判するためだった(小選挙区は海江田氏の勝利)(『週刊文春』11月2日号)。

 希望の党は安倍首相と同じ改憲勢力であり、小池氏は将来的に自民党と手を組むのではないかと見られている。「あれだけ悪し様に非難していた安倍さんと、東京五輪を一緒にやり遂げましょう、と手を組む。そしてオリンピックを成功させ、その実績をもって、再び国政に活路を見出していく戦略ではないでしょうか」と政治ジャーナリストの泉宏氏は分析する(『週刊新潮』11月2日号)。2020年以降もこの2人が日本を牛耳り続けるのだろうか。

安倍晋三 首相
「今後も求められれば誠意を持って丁寧に説明していきたい」

NHK NEWS WEB 10月22日

 もはや毎度おなじみとなった首相の「誠意を持って丁寧に説明していきたい」がまたもや炸裂した。自民党大勝が明らかになった直後のNHKの開票報道番組で、森友学園や加計学園をめぐる問題について問われた安倍首相は、ここでも謙虚な姿勢を崩さなかったが、本当に「丁寧に説明」されるかどうか、はなはだ怪しい。

 6月19日に行われた国会閉会後の記者会見で「国民から信頼が得られるように、冷静に、一つ一つ、丁寧に説明する努力を積み重ねていかなければならない」と発言していたが、その後、野党から求められた臨時国会での審議には応じていない(NHK NEWS WEB 6月19日)。

 衆院選前にも「批判も受け止め国民に説明もしながら選挙を行う」(日テレNEWS24 9月25日)と語っていたが、街頭演説などでは一切触れずじまい。党首討論会では「私もこれまで予算委員会や閉会中審査で丁寧に説明を重ねてまいりました」と“過去形”にしてケリをつけてみせた(日本記者クラブでの党首討論会 10月8日)。

 そして冒頭の言葉である。しかし、首相指名選挙を伴う特別国会では「物理的に厳しい」として、さっそく質疑に応じない方針を打ち出した。もう説明するつもりがないのなら、そう言えばいいのに。これには身内の公明党・大口善徳国対委員長も「6月の臨時国会要求から時間もたっている。代表質問や予算委に応える必要がある」と釘を刺しており、与党内部からも「野党の要求に全く応えないわけにもいかない」という声が上がっているという(毎日新聞 10月25日)。

 結局、トランプ米大統領の来日やベトナムで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)への出席などの外交日程が続くことから、特別国会は実質3日間のみで会期延長も行わず、臨時国会も見送る方針が明らかになった(朝日新聞デジタル 10月26日)。国会で森友・加計学園問題について「丁寧に説明」するどころか、あれだけ訴えていた「北朝鮮の脅威」についての議論さえ行わないのだからどうかしている。そもそも国会をまともに開く気がないようだ。官邸関係者は「このまま逃げ切る構え」と明かしている(『週刊文春』11月2日号)