「死刑」は、日本の司法制度において最も重い刑罰だ。それだけに、死刑判決を受けた「死刑囚」にネガティブな印象を持つことは、ある種仕方ないことだといえるだろう。しかし、実際に死刑囚と触れ合う現役拘置所幹部は、「担当職員は毎日会っているので当然、一定の感情がわきます」と語る。実際に死刑囚と接する人々は、いったいどんな感情で彼らに向き合っているのだろう。
ここでは、共同通信社で編集委員兼論説委員を務める佐藤大介氏の著書『ルポ死刑 法務省がひた隠す極刑のリアル』(幻冬舎新書)の一部を抜粋。関係者たちの思いを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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現役拘置所幹部に異例のインタビュー
刑務官、とくに死刑執行施設のある拘置所に勤務している刑務官にとって、確定死刑囚や死刑執行は特別な処遇を要するものだ。それだけに、関係者にとっては重苦しいものであり、日常的に話題にするのは一種のタブーとなっている。
記者会見や国会答弁で法相が死刑制度について語ることはあるが、収容施設の幹部が死刑について公に語ることは滅多にない。
2012年10月、私が東京拘置所に取材に訪れた際、幹部職員が施設の概要説明をしてくれたが、収容者数の内訳に確定死刑囚は含まれていなかった。東京拘置所内に死刑執行施設があることも、説明では触れていない。
その点について質すと、幹部職員は「死刑や死刑囚に関しては、こちらから積極的にご説明することはしておりません」と、やや困惑した表情で答えていた。それほど、死刑とは関係者にとってデリケートな問題なのだろう。
この取材の際、被収容者の生活全般を担当する部門の責任者である松田治処遇部長(当時)にインタビューする機会があり、確定死刑囚に関する質問も短時間ながら認められた。確定死刑囚を収容する拘置所の幹部に、死刑について話を聞くことができるのは異例と言ってよい。
──確定死刑囚にはどのように接していますか。
「死刑囚だけ特別に処遇することはありません。しかし、死刑囚は執行によって刑を受けたことになるので、適切に受刑させるのがわれわれの役割だと考えています」