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「求められる役割が終わったらクビ」ネットフリックス社員の“出張旅費と経費”に関する唯一の指針とは

2022/02/22
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十分な退職金でポストを空ける

 ネットフリックスの社員の給料はIT業界、映像業界のなかでもトップクラスと言われる。プロスポーツのトップチームにいるわけだから高い報酬は惜しまない。その代わり一流プレイヤーとしてパフォーマンスを十分に発揮できなければ、すぐにクビを切られることでも知られる。

 同社の企業文化や社員の行動規範を定めた「ネットフリックス・カルチャー・デック」には、そうした雇用方針が赤裸々に書かれている。

〈Netflixでは、それぞれの社員が他社で受け取ることができるであろう最も高い報酬額を見積もり、その最大額を支払います〉

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〈能力がいまひとつ振るわない社員に対して十分な退職金を提示し、ポストを空けることでさらなる優秀な社員の雇用に力を注げるようにしている〉

創業者のリード・ヘイスティングス氏 ©getty/共同通信社

 優れた人材を集めるために、ヘイスティングス氏が最も重視するのが自由な働き方の環境づくりだ。本のタイトルにある通り“NO RULES”(ノー・ルールズ)を徹底する。

 決まった就業時間はなく休暇規定もない。これによって社員は自分の生活をコントロールしやすくなる。

 出張旅費、経費も一定額までは事前に申請する必要はなく上司の承認を待たなくてよい。このため余計なフラストレーションをためることなく、次のアイディアを生み出すことに集中できる。

 何か物を購入するときは、自己判断で購入し、領収書の写真を撮って経理担当者に送るだけだ。経理による監査はあるが、出張旅費と経費に関してあるガイドラインは〈ネットフリックスの利益を最優先に行動する〉という一文のみ。会社に利益をもたらすのであれば、ファーストクラスでの出張も高額な接待も認められる。

「ノー・ルールズ」の根底にあるのは、優秀な人材であれば、自由な選択肢を与えても会社の利益にそった責任ある行動をとってくれる、「自由と責任」の精神なのだ。