コロナ禍が収まりを見せない。4月7日に緊急事態宣言がなされて以降、多くの企業がテレワークでの業務を余儀なくされた。現代の勤労者の多くが所謂事務系ワーカーである。この事務系ワーカーの毎日は、電車に乗って会社まで「通勤」をするという生活スタイルだ。政府や自治体が「自粛」を要請したのが、この「通勤」という行為に対してだった。

「みなさんお仕事は自宅でなさってください」東京都の小池百合子知事は女性らしいやさしい声で、そしてキャスター出身らしい滑舌の良さで都民に対して訴えかけた。

テレワークに戸惑いつつも「意外とできてしまった」

 こうした呼びかけに対して、当初は多くの企業が戸惑いをみせた。曰く、「パソコンだけで仕事が完結するわけがない」「営業はお客様とお会いすることが基本」「毎日社員が会社に来なければ管理ができない」「うちは情報管理上、社員に自宅で仕事はさせられない」などというもの。

ADVERTISEMENT

「STAY HOME」を呼びかける小池都知事 ©AFLO

 もちろん、仕事には自宅ではできない職種のものも多数存在する。だが日本の多くの勤労者は、会社に通勤してパソコンなどの情報端末を使って業務を行うことが一般的な就業形態になっている。そうした意味では、勤労者の多くが働き場としているオフィスを離れて自宅でお仕事を、といったアナウンスは適確なものだったといえる。

 では実際にテレワークの実施を余儀なくされた多くの会社では今、どんな変化が生じているのだろうか。結論としては、「意外とできてしまった」という声が多く聞かれる。

日常業務の“無駄”がかなり排除された

 これまで、社員が机に座って仕事をする。そしてその社員を管理職が管理して業務を効率的に推進することが、会社における日常であった。ところがテレワークになると、気軽に社員に声をかける機会は明らかに減少する。しかるに社員一人一人に事前にかなりこまかく業務内容を指示する必要が生じる。今日はどの業務をどこまで仕上げる、そしてその結果を何時までに完成させ報告させる……。

 日常の会社の場では社員同士のおしゃべりも多い。会議でも無駄話が大半を占めることがある。ところが、テレワークにしたことでこうした無駄がかなり排除されたとの声が多い。つまりテレワークでは、多くの会社での業務がかなりシステマティックになったということだ。

©iStock.com

 社員の側はどうか。なんといっても通勤からの解放は日常における大変革だ。朝起きて天気を気にしながら駅まで向かう必要がない。満員電車で不愉快な思いをすることもない。上司の顔を気にしながら仕事しなくてもよい。ましてや夜、上司や先輩、同僚の「ちょっと一杯」に付き合う必要もない。通勤着も着ないでよい。一日の業務が終われば、アウトプットを提示すればおしまいだ。パソコン閉めてさあおしまい。そのままベッドに寝転んでゲームをやる、YouTubeを見る。なんだかよいことずくめだ。

 なんだ、結構できるじゃないか。でもいっぽうでこうした働き方の「変更」は、企業の側にもそこで働く勤労者の側にも、実は大きな変化をもたらしているようだ。