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性被害者やコロナ感染者にも多用される「自己責任論」…弱者をバッシングする日本社会の“不寛容すぎる実態”「権利の行使を抑圧している」

『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』より #2

2022/04/19
note

 時折、市場メカニズムと前記の自己責任論を混同している人を見かけますが、これは完全な誤りです。健全な市場メカニズムの維持と、過度な自己責任論の抑制は両立するばかりか、むしろ車の両輪といってもよい関係にあります。

 企業というものは本来、利益を追求するために存在しており、競争力を失った企業は市場から退出させるのが望ましい姿と言えます。時代とともに企業が変化していくのは当たり前なので、健全な経済を運営するためには、企業も一定頻度での入れ替わりが必要という理屈です。

過度な自己責任論は市場経済の運営にとって邪魔な存在

 しかし企業で働く労働者は違います。

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 企業が入れ替われば、当然、そこで働く労働者も転職を余儀なくされますが、立場の弱い労働者にとって、ひとたび失業すると生命の危険が生じるような状況では容易に転職などできるわけがありません。このような環境では、企業の新陳代謝は進まず、結果として企業の競争力も低下してしまうのです。

 政府は失業者に対する各種支援を行っていますが、一連の失業対策には、単に労働者を保護するだけでなく、持続的な経済成長を実現するという目的も存在しているのです。

 失業による国民生活への影響を緩和する措置を政府が講じなければ、結局のところ企業の経済活動も阻害されるという話であり、各種の失業対策は実は成長戦略も兼ねています。

 過度な自己責任論というのは、市場経済の運営にとってむしろ邪魔な存在といってよいでしょう。

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