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JR西日本・指導車掌と検修員が語る「私たちの車両の流儀」

2017/12/18
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床下機器のカバーを何気なく閉めてはいけない

 323系が大阪環状線でデビューしたのは約1年前。103系や201系という国鉄時代からの車両が主力を張り続けていた大阪環状線にとってはまさしく待望の新型車両だ。今後は201系も323系に置き換えられる予定で利用者にとってはありがたい限りだが、車両の“プロ”にとってはなんとも複雑な思いがあるようだ。

 

「古い車両は10年以上見続けてきていますからね。ですが、323系が今までと違うと言っても、基本的な部分は変わらないと思うんです。例えば、床下機器のカバーを閉める時。機器箱の枠にはゴムパッキンがついているのですが、その位置を意識せずに何気なく閉めるのではダメ。パッキンとカバーの間に隙間ができると、水やホコリが入ってきてのちのちの不具合につながります。そういう部分、原点は古い車両でも新しい車両でも変わらない。そう思いますよ」

ひとつの作業でもそれだけで帰ってくるな

 大井さんは、「ひとつひとつの仕事の意味・背景を考えなければこだわりのないただの作業になってしまう」と語る。

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「だから若い子たちに教えるときも、例えば蛍光灯の交換をするときでも、いい状態の車内の風景をちゃんと見ておけと言っています。そうすると何かのときに『あれ、何かおかしいぞ』と感じるようになる。不具合を早く発見して対処できる。ひとつの作業でもそれだけで帰ってくるな、ということですね」

「いい状態の車内の風景をちゃんと見ておけ」

 自動車では自動運転技術の開発が進むご時世。鉄道の世界でも自動運転や無人運転が行われている線区も増えてきた。が、すべてを頭に入れて乗客の状況や事情を踏まえた対応をする車掌や、こだわりを貫く検修員の仕事を自動化することはできない。

 ときに電車のダイヤが乱れ、思わず車掌や駅員に怒りをぶつけた事がある人もいるだろう。が、そんなときは見えないところで奮闘する人たちのことを思い浮かべてみれば、怒りも収まる……かもしれない。

写真=鼠入昌史

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