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山本 一郎
2017/12/21

もうクリスマスに何も感じない

ハロウィンまで日本社会に定着しやがって

 一昨年ぐらいまでは教会であれやこれやありましたが、子供ができてから徐々に宗教的な関わりも減り、家内と家族でパーティーをして過ごすクリスマスへと変貌しました。

心は呪いと怒りで満ち溢れる

 昨今は童貞界隈も騒がしいようですが、非モテの最たるものとして人生の大半を過ごした私にとってはクリスマス周辺というのは実にイライラするものです。ショウウィンドウをはしゃいで眺めるカップル、行きつけの店に二人の世界を構築するアベック、どのような形の男女関係であれクリスマスシーズンは見かける男女のその実態や容姿に関わらず数割増しの怒りのオーラを放たせる時期なのであります。通常、クリスマスとは働く時間でありましたので、日ごろのストレスを解消するために公園を散歩でもしているとき交際中の男女が池をバックに記念撮影をしたいとカメラを押し付けてきた折にはそのまま池の中に蹴り落してやろうかという衝動に駆られるのであります。もちろん笑顔でシャッターは押すものの、その心は呪いと怒りで満ち溢れるわけです。

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 結婚して子供が生まれると、もはやクリスマスは子供のものであります。宗教的な儀式というよりは、何か欲しいものを買ってもらえるチャンスとして、クリスマスイブの夜が来るのを指折り数えてまっているのを見ると、もはや本来の意味でのクリスマスという存在は失われた。物欲に満ち溢れた現代社会の性と金という欲望の渦に飲み込まれた悪しき人間の堕落した精神が暗く黒い深淵に落ちていく様をただただ呆然と見送る期間となっているのだ。その煌く装飾も華やかな街角も道行く人々の浮かれた表情も生物の歴史40億年の前には一瞬のまばたきにも満たない些末な出来事にすぎない。お前らは真核生物の誕生から進化をやり直すべきだ。実に腹立たしい。世間はこんなに潤いで満ちているのに、かくも静かな、そして虚しくも儚い虚空を胸に抱いてひたすらにクリスマスが終わるのを待ち続けるというのか。こんな価値のないイベントに無駄な労力を費やすぐらいなら神は西暦を終わらせるべきではないのか。人間の精神は時間を愚弄している。ちくしょう、みんな幸せそうにしやがって。何が楽しいんだ。何を期待しているんだ。漠然たる人生に対する不安に押し流されてしまえよ。どうせ数年前のクリスマスなんて誰もほとんど覚えていないのだろう。その場その場の楽しい雰囲気に流されて奈落の底まで堕落しやがって。その奈落の底で正座して永遠に反省しろ。そしてそこでずっと生きていろ。

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