昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

ロッテ井口資仁新監督が見せたい「我慢した先にあるもの」

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2017/12/25

「見せたいですね。我慢した先にあるものを」

 多忙を極めたオフも精力的に日本全国を動いた。千葉ロッテマリーンズを新たに指揮することになった井口資仁監督は12月も積極的な活動を続けた。球団行事に顔を出し、殺到する取材のオファーに応えた。そして日本各地に出向いては野球教室を繰り返し、子供たちに野球をする楽しさを伝えた。このオフ、いろいろな場面で新監督の活動に立ち会う機会があった私だが、今も心に強く残っている若き指揮官のメッセージがある。あるインタビューでの事だ。最後に「若い世代に伝えたいことはなにかありますか?」と聞かれた。少しだけ考えるとグッと目に力を込めた。そして力強く語り出した。

「見せたいですね。我慢した先にあるものを。今の若い子って、すぐに仕事を辞めたりするじゃないですか。しんどいとか、こんなはずではなかったって。でも、そこを乗り越えて欲しいですよね。もうちょっと頑張って、なにくそとやっていけば見えるものがあるかもしれない。そういう事を野球を通して見せたいですね」 

オフも積極的な活動を続けていた井口新監督 千葉ロッテマリーンズ提供

 思わず唸りたくなった。それこそが現役時代から背番号「6」がグラウンドで伝え続けてきたことの一つであった。09年にマリーンズ入りをして今日まで、この男が弱音を吐いたことや、悲しい顔をしたところを私は一度も見たことがない。爽やかな笑顔を見せてくれるか、攻めの表情。いつだって、どんな時だって前を向いていた。

 死球はプロ野球歴代5位の146個。患部が大きく腫れ上がった時もあった。骨折をした時もある。それでもファイティングポーズをとり続けた。その口調と表情からは本当に何事もなかったのではないかと錯覚をしてしまうほど、ケロッとした表情でグラウンドに立ち続けた。「全然、大丈夫」。それが口癖みたいなものだった。そこには逆境に負けてなるものかというプロ根性が凝縮されていた。