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〈大阪桐蔭、春夏連覇ならず〉「不祥事で出場辞退」「控え選手」だった西谷浩一監督の「口説く」「見抜く」「耐える」

2022/08/18
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 西谷はコーチ時代に野球ノートを選手に習慣づけ、今ではそれが大阪桐蔭の伝統となっている。選手は毎日の反省や悩み、課題を書き込み、翌朝、西谷に提出する。社会科の教師である西谷も授業の合間にノートに目を通し、可能な限りコメントを書き、練習の前に選手に返却する。

「激励の中に、モチベーションを高める言葉が入っている。ノートでもよく怒られましたが、絶対に西谷先生は選手をけなさず、悪い部分をとがめたりすることもない」(森)

「PLにどうやったら勝てるのか」

 西谷のコミュニケーション能力には、甲子園通算58勝のPL学園元監督の中村順司も舌を巻く。

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「タイムリーを打った選手が、ガッツポーズをせず、表情も変えずに塁上でレガースを外していましたよね。大量点を取っても、淡々と野球をやる。以前のPLもそうでしたが、こういった姿勢が相手にとっては脅威になるんです。西谷君も西谷君で、本塁打を打った選手を掴まえて、おそらく『冷静に次の守備につくように』などと声をかけているのでしょう。選手に寄り添った指導ができている」

 チーム作りにおいて他の高校が軽視しがちな、甲子園に繋がらない春季大会で西谷は控え選手や下級生を起用。競争を煽り、全体の底上げをし、それが夏の強さに結びついている。

夏の甲子園決勝では13-2の圧勝

 野球指導者として西谷の根底に流れるのは、自身は縁のなかった甲子園に対する憧憬の眼差しと、かつて甲子園で一時代を築いたPL学園に対する反骨である。

#2へ続く〉

〈大阪桐蔭、春夏連覇ならず〉「不祥事で出場辞退」「控え選手」だった西谷浩一監督の「口説く」「見抜く」「耐える」

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