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西澤 千央
2018/01/05

キャプテン筒香嘉智が口にした「孤独です」の意味

文春野球コラム 2017 to 2018

「孤独です」とその人は言いました。

 横浜DeNAベイスターズキャプテン、筒香嘉智は映画『FOR REAL』の中で自分が置かれた状況を、ぽつりと、しかしはっきりと「孤独」と表現したのでした。

 ベイスターズは今年、2年連続でCSへ出場し、2年連続ファイナルステージに進み、そして、19年振りに日本シリーズの扉を叩きました。雨を浴びて、泥を浴びて、ビールを浴びて、同点ホームランを浴びて、逆転サヨナラ打を浴びました。物語のラストを飾る紙吹雪は、ベイスターズの勝利を祝福するそれではありませんでした。

 2017年のベイスターズをずっとカメラで追った『FOR REAL』。チームの戦いを軸に、そこにはいくつものドラマがあり、ひとつの物語を紡いでいます。そのどの場面にも、筒香はいました。ケガでファーム落ちを余儀なくされた選手に、わざとキツイことを言って励ます。殊勲打を放った選手を大袈裟に讃える。奇声をあげながらベンチで騒いだと思えば、ロッカールームで真剣な口調で奮起を促す。この人は一体何人いるんだろうかと思うくらい、筒香はどこにでも現れて、そのたびに選手たちの表情を和らげていました。チームメイトの孤独に常に寄り添っていたのが筒香だったのです。

チームメイトの孤独に常に寄り添っていた筒香嘉智 ©文藝春秋

「孤独」な筒香だから分かること

 どうして私は野球を好きなのか、ベイスターズを好きなのか。文春野球というサイトでベイスターズのことを書かねばならない緊急事態になり、そのことをかつてなく考えた一年でした。従兄弟が好きだったから、割と地元に近いから、色々な要因はありますが、でもやっぱり私はホエールズ、ベイスターズという存在自体を愛している。究極、勝っても負けてもどちらでも構わない。そこにいてさえくれればいい、そういった気持ちが強いのだと思います。

 あまりいいファンとは言えないかもしれない。ベイスターズに対する私のただれた想いを見透かすかのように、チームの状況はおどろくほど悪化していきました。愛してやまないベイスターズが、誰も「入りたくない」チームになってしまった。そこに現れたのが、筒香喜智、その人でした。

 村田も、内川も、さかのぼれば石井琢朗だって佐伯だって、おそらく誰もが「孤独」だったのだと思います。ただ筒香が今感じている孤独は、少し違うようにも思うのです。誰かの孤独を癒すために、自分が孤独であり続ける。『FOR REAL』の筒香は、そう見えました。孤独な筒香だからこそ、チームメイトの孤独が分かり、だからこそチームメイトは筒香の言葉を力にすることができる。その共犯関係に、少し怖くなったくらいでした。その上でもたらされるのが、勝つということなんだとあらためて思わされたから。