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ロッテ“伝説のテキスト速報”はこうして生まれた

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2018/01/08
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ついに始まった試合速報

「それで、このイベント運営に携わっていた人の中にマリーンズの関係者がおり、Webの実況中継を実験的にやろう、という話をしていたんですね」

 だが、いざ行うにしても人手が足りなかった。そこで、元々自らのWebサイトでロッテの試合展開を公開していたことがあり、編集者として文章も書ける大崎さんに白羽の矢が立った。こうして実験的にWebテキスト速報が始まったのが、2001年の事だ。

「ただ、始めてみると(会社の)他の仕事が出来なくて……。試合中の束縛時間が3時間、4時間。さらに試合前から選手が練習する写真も撮影してアップしたりと色々仕事もありましたしね。でも僕もロッテが好きなので。小学生の頃は『俺は大人になったらロッテのサードを守るんだ!』と思ってましたしね。『有藤じゃない、俺だ』って(笑)」

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 球場に入り、放送室で速報業務を担当し始めた大崎さんの横にはウグイス嬢の谷保さんがいた。近くには選手がいて練習をし、談笑している。さらに自らが着ているのは、ロッテのスタッフジャンパーだった。選手のコメントを取るために、囲み取材もした。

「夢って別のやり方で叶うと思いました」

 それでも毎試合試合を見て速報を書き起こすことは大変だったという。

「見ていた方ならわかると思いますが、機械的な速報ではなくて、人間の暖かみのある速報を書いていたんです。例えばロッテの選手がバントを失敗してときは『マジかよ』とか『やっちゃった』という風に書いたり。ただ、これが誤植が出るんですよ。てにをはを間違えたり。それでも見る人が楽しく、かと言って選手を貶すのでもなく。そういうことを気をつけていました。今は全部システム化してしまいましたけどね……」

 さらに、放送室から選手の動きが見えにくいということもあった。

「それで二人でやるわけです。入力は僕がやるんですが、もう一人スコアをつけている人がいて。見えないところは全部見て『大崎さん、今の切れたな』とか『このラインでドライブがかかってフェアだった』とか。でも球種はわかりました。僕は野球経験者なので、キャッチャーがこういう風に動いたらスライダーとかカーブとか、ある程度はわかりますよ」

「でも会社としては『なにやってるの? 社長は』ってなるじゃないですか(笑)それでうちの会社の関連会社でアルバイトをしていた人に後を任せたんです」

 そのために大崎さんは2002年を最後に速報業務を離れ、別の人に後を任せる。その人物こそ、かつてロッテファンから“リーダー”と呼ばれた男だった。閲覧者を軽快な表現で楽しませ、ポジティブな文章でチームを励ました、その“リーダー”へのインタビューを次回は掲載したい。

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