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鳥集 徹
2018/01/15

Q1 そもそも「がん」って、どういう病気?――がんにまつわる素朴な疑問 Q&A

 生涯で2人に1人がかかると言われる「がん」。でも、知っているようで、知らないことも多いのではないでしょうか。そこで約20年にわたり医療現場を取材し、がんに関する記事も数多く書いてきたジャーナリストの鳥集徹さんに、素朴な疑問をぶつけてみました。参考文献として信頼できるサイトのリンクも紹介しています。いざというときに備えて、知識を蓄えておきましょう。

A1 無秩序に増殖して、転移する性質のものを「がん」と呼びます。

 大人であれば「がん」が怖い病気であることを知らない人はまずいないと思います。しかし、がんがどんな病気なのか、みなさんはどれくらいご存知でしょうか。

 がん細胞は、正常な細胞の遺伝子がいくつも傷つくことによって起こると考えられています。正常な細胞はまわりの状況に応じて分裂・増殖していき、やがて適切な段階で増殖が止まります。そうやって生物は、健常な臓器や組織を形づくり、適切な機能や秩序を保っているのです。しかし、遺伝子が傷ついて発生した異常な細胞は、まわりの状況とは関係なく無秩序に増え続けます。それがやがて大きくなって、腫瘍(できもの)を形成するのです。

 ただし、異常な細胞が腫瘍をつくったとしても、それだけでは「がん」とは言えません。まわりの正常な組織に染み込むように広がり(浸潤)、血管やリンパ管などの流れに乗って他の臓器や骨などに飛び火(転移)する性質のあるものを、「がん(悪性腫瘍)」と呼ぶのです。腫瘍ができたとしても成長がゆっくりで、飛び火しないものは悪性腫瘍とは言わず、「良性腫瘍」と呼ばれます。

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 では、なぜがんが大きくなると、命が奪われるのでしょうか。その第一の理由は、臓器の機能が破壊されてしまうからです。たとえば、肺にできた腫瘍が大きくなると、呼吸困難になります。大腸の腫瘍が大きくなると腸閉塞を起こし、おならや便が出なくなって、嘔吐や腹痛が起こります。白血病など血液のがんでは、異常な細胞が増えるために正常な血液がつくれなくなり、貧血、発熱、出血など様々な症状が出ます。

 また、がんが進行していくと正常な細胞にとって必要な栄養をがん細胞が奪ってしまうので、筋肉がやせてしまい、体重が大幅に減少して、体力が落ちてしまいます。これを「悪液質」と呼びます。このように、がんになると臓器の機能が奪われ、体も衰弱してしまうため、命を落としてしまうのです。

日本人にがんが増えた一番の要因とは?

 1980年頃からがんは日本人の死因1位で、死亡者数も増え続けています。しかし、がんが増えた一番の要因は高齢化です。遺伝子の傷つきが蓄積していくので、年を取れば取るほど、がんになりやすくなるのです。日本人にがんが増えたのは、日本人が長寿になった証でもあるわけです。

 それに、心疾患(2位)、肺炎(3位)、脳血管疾患(4位)、老衰(5位)、不慮の事故(6位)、腎不全(7位)など、人間は様々な要因で亡くなります。がんばかりをいたずらに怖がるのではなく、適切な知識を持って心がまえをしておくことが大切だと言えるでしょう。

【参考】「知っておきたいがんの基礎知識」(国立がん研究センターがん情報サービス)