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長谷川 晶一
2018/02/01

伊藤智仁が「泣きそうになった」夜 宮本慎也との友情秘話

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

 東京・神保町、書泉グランデ。7階の控室にいたのは宮本慎也ヘッドコーチ、そして、昨年まで投手コーチとして25年間、ヤクルトに在籍していた伊藤智仁富山サンダーバーズ監督の2人だった。宮本、伊藤両氏が談笑を続けている。ときには黄金期の思い出話を、あるいは中日入団が決まった松坂大輔の課題と期待を楽しそうに話し合っている。長年のヤクルトファンとして、そんな2人の姿を見るのはたまらない至福の瞬間だった。

 1月26日、拙著『幸運な男 伊藤智仁 悲運のエースの幸福な人生』(インプレス)発売記念として開催された「宮本慎也×伊藤智仁」トークイベント。開催発表と同時に定員80席は瞬く間にソールドアウトとなった。そして、当日は立ち見客も含めて会場は立錐の余地もないほどだった。

イベント中の様子。左から宮本、筆者、伊藤 ©長谷川晶一

宮本慎也×伊藤智仁、夢の顔合わせが実現したきっかけ

 きっかけは本当に些細なことだった。昨秋、野球雑誌の企画で伊藤にインタビューをして、取材終了後に食事をしたときのことだった。2軒目の静かなバーでの話題は、「新刊イベントのゲストを誰にするか?」だった。作者である僕は、ふと「宮本ヘッドコーチをお呼びすることはできないですかね?」と提案をした。正直言えば、ダメで元々のつもりだった。僕の言葉を聞いた伊藤はアッサリと言う。

「あぁ、慎也か。いいんじゃない。慎也なら面白くなりそうだしね」

 そして、驚いたことに伊藤はその場ですぐに携帯電話を取り出し、宮本にLINEメッセージを送ったのだった。深夜だったにもかかわらず、返信はすぐにきた。ドキドキしながら様子を見守る僕に対して、伊藤は言った。

「球団の許可が取れればOKだって!」

 まさか、こんなに簡単に本人の承諾が得られるとは! 翌日、改めて球団にオファーを出すと、「了解しました」とトントン拍子に事は進んだ。こうして実現したのが1月26日の書泉グランデでのイベントだった。前述したように、告知と同時にチケットはすぐになくなった。やはり、ヤクルトファンにとって、両者の顔合わせは魅力的に映ったのだろう。司会を務める僕も、当日まで興奮を抑えることができなかった――。