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老朽化マンション相続の末路 “郊外は特に要注意”の理由

2023/03/07
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老朽化マンション相続の末路

 こうした老朽化の著しいマンションを相続してしまうと、どのような事態になるのだろうか。まず管理状態の悪いマンションは賃貸物件として評価を得られない。都心部、駅近など素晴らしく良い立地であればともかく、エントランスがオートロックでない、エレベーターがない、共用部が汚れている、などはそもそも賃貸物件として致命傷になる。

 自分はちゃんと管理費、修繕維持積立金を支払っていても、他の区分所有者が滞納していれば、必要な修繕が行われず、いつまでたっても環境は改善されない。

 それでは売却しようとなっても、財政状況のよくないマンションを積極的に検討する買い手は少なく、思い描くような価格では売却できないケースが増えている。売れればまだしも、ニュータウン戸建て住宅と同様に、郊外などに立地するマンションとなると全く買い手がつかないケースもでてきている。少しでも売れるようにと自分の住戸内をリフォームしても、その費用を回収すらできないマンションもある。

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 現在では首都圏の物件ですら、郊外で最寄りの駅までバス便、あるいは鉄道沿線でも主要な鉄道ではない支線の駅が利用駅などになる物件で、築年数のたったものは、売値が車1台分程度になっているものもざらにある。

郊外のマンション相続は要注意

 貸せない、売れないとなった場合、戸建て住宅以上に厄介なのが、相続人が管理費、修繕積立金を払い続けなければならないということだ。物件にもよるが、老朽化したものほどその額は高額になる。月額4万円や5万円を支払う。年間にすれば50万〜60万円を全く価値のなくなったマンションに支払い続けるのは、もはや資産ではなく負債そのものだ。

 最近ではこうした状態に陥ることを嫌気して、相続した事実を管理組合に知らせない相続人が頻出している。またマンション内に貸せず、売れずにどうにもならなくなった空き住戸が増えると、マンション内の環境はさらに悪化していき、やがてはスラム化の危機を迎えることになる。

 戸建て住宅よりも流動化しやすい(売りやすい)などと勝手に思い込んでいたマンションも実はこれからは相続するとかなり厄介な存在になることが予測される。特に郊外部にあるマンション相続は要注意の時代になるのである。

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牧野 知弘

文藝春秋

2023年2月17日 発売

老朽化マンション相続の末路 “郊外は特に要注意”の理由

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