文春オンライン

物置にハクビシンが棲みつき…“ニュータウン一戸建て相続”の実情「売れない、貸せない、自分も住む予定がない」

2023/02/21

 ニュータウンとは、都市に集まる人々の受け皿として山や大地を切り崩して新たに造成されてきた郊外地域の新興住宅地のことである。国土交通省ではニュータウンを次のように定義している。

(1)1955(昭和30)年以降に開発されたもの

 

(2)計画戸数1000戸以上または計画人口3000人以上

 

(3)開発面積16ha以上

 現在までにどれだけのニュータウンが誕生してきたのだろうか。これも国土交通省によれば、全国のニュータウン数は2022か所。開発面積は18.9万haに及ぶ。この面積はほぼ大阪府の面積(19万ha)に匹敵し、全国の市街化区域面積の13.1%、住居系用途地域の15.1%に相当する広大なものだ。

写真はイメージ ©iStock.com

ニュータウンを求めた人々は80代~90代に

 驚くのは、現在でも計画、造成が進行中のニュータウンは121か所を数えていることだ。ニュータウンの供給が活発に行われたのは1970年代前半。高度経済成長により、人々が職を求めて都市部に集中し始めていた時代に該当する。

ADVERTISEMENT

 当時、ニュータウンに住宅を求めていたのは30代から40代。ということは逆算するならば現在の年齢はおおむね80代から90代に相当する。ニュータウンで育った子供たちは50代から60代。当然のことながら相続が頻発する世代に該当する。

 神奈川県横浜市郊外にあるニュータウンを例に、相続を考えてみよう。70年代前半に分譲されたこの街は、ゆったりとした敷地に瀟洒な一戸建てが並ぶニュータウンで、都内に勤務する大企業サラリーマン、医者、パイロットなどがこぞって買い求めた人気物件だった。時が経ち、このニュータウンで育った子供たちはそのほとんどが東京都心に勤め、50代から60代になった彼らは都内のマンションなどに居を構えている。親はすでにほとんどの人がリタイアし、毎月のようにそこかしこで相続が発生している。