これまで不動産は相続のなかでも非常に重要視されてきた。相続申告においても現金で持つよりも安く評価されるので重宝がられ、相続財産のいわばスター的な存在とされてきた。

 しかしいま日本では、親が残した不動産に苦しむ子、孫が増えている。ローンが付いたままの借り手のいないアパート、地方の実家の処置、老朽化して使わなくなった別荘、引き継いだ山林の管理など、相続してしまった不動産に途方に暮れ、困惑する姿が日本中で目立ち始めている。

 この「いらない不動産」という問題は、国土交通省「平成30年度土地白書」の調査からも窺える。土地に関する意識を聞いたものだが、土地を所有することに「負担を感じたことがある又は感じると思う」と答えた人の割合は42・3%にも達する。実際に所有している人に限定しても38・9%。約4割の人が土地所有に何らかの負担を感じるという結果となった。

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 さらに所有地が空き地の場合、負担感は47・4%に増し、空き地が活用しやすいはずの宅地でも負担感は46・6%に達した。これは宅地の空き地は固定資産税など負担が大きいからだろう。そしてこの活用されていない空き地の取得原因の68・3%が相続によるものだった。

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「いらない不動産」は国が引き取ってくれる?

 土地を相続したものの扱いに悩んでいる人に2023年は朗報がある。国は4月27日から相続土地国庫帰属制度をスタートさせる。相続した土地で、使わない、利用するあてがないものについて、条件をクリアすれば、国に帰属させることができるようになるのだ。

 この制度ができた背景には国内で増え続ける「所有者不明土地問題」がある。所有者不明土地問題研究会の調査によれば、2016年に全国で所有者不明の土地は410万haに及び、これは九州の面積367・5万haを凌駕する。

 さらに同研究会によれば、このまま推移すると2040年にはその面積は720万haまで拡大し、国土面積の約2割、北海道の面積に匹敵する規模に膨れ上がるという。国はこれ以上、所有者不明土地を増やすことは、防災や行政・財政上もよろしくないと考えているのだ。