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2024年にはさらなる変化も…国の“飴と鞭”

 10年分の管理費用がどのように算出されるかは不明だが、国有地の管理事例などでは、宅地で80万円、原野で20万円程度(いずれも10年分)とされているので参考になるかもしれない。

 また国庫に帰属できる相続財産は、この制度が開始される4月27日以前に相続した土地でもよいとされている。これは、かつて相続し、自分にとって価値がないと思われる土地を国に引き取ってもらうチャンスが到来したともいえよう。

 ただし、申請や審査にあたって要求されている条件は意外にハードルが高そうだ。田畑や山林、地方に残された先祖伝来の土地などは、権利関係が複雑で登記もされていない、境界が定まっていない、地役権や入会(いりあい)権といった権利が付帯する、など解決しなければならない問題が多数あるはずだ。

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 都市市街地であれば、こうした問題はあまりないかもしれないが、家の解体費用に加えて、土壌汚染や地中埋設物などの処理や撤去などに多額の費用が掛かる恐れもある。それらを負担したうえで、さらに10年分の管理費用を支払わなければならないとなると、更地として売るほうがよい、ということにもなりそうだ。

 いっぽうで国は2024年4月より、不動産相続時に登記することを義務付けた。また従前に相続した不動産についても今後3年間での登記を義務付け、違反した場合には10万円以下の過料を課すことにした。所有者不明土地の撲滅に向けて国は飴と鞭を繰り出す。その手始めが相続土地国庫帰属制度なのだ。

2024年4月より国は不動産相続時に登記することを義務付け、従前に相続した不動産についても今後3年間での登記を義務付ける ©iStock.com

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。