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2023年の論点

ローンの残ったアパート、地方の実家、山間のよく知らない山林…相続してしまった「いらない不動産」を国に引き取ってもらうには?

ローンの残ったアパート、地方の実家、山間のよく知らない山林…相続してしまった「いらない不動産」を国に引き取ってもらうには?

2023/01/04

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, ライフスタイル, ヘルス

note

 土地の利用ニーズが低下しているなか、相続で望まない土地を抱え込み、その負担に苦しむ、管理せずに放置する、登記もせず野放しにするといった行為の積み重ねがこの問題をより深刻にしている。

引き取りにはコストがかかる?

 では相続土地国庫帰属制度の概要をみてみよう。申請の対象となる不動産は「土地」だ。建物は含まれない。また申請者は、土地を相続または遺贈(相続人以外が遺言などで取得)された人に限られる。共有の土地の場合は共有者全員で申請する必要がある。

 申請先は、法務局または地方法務局になる予定で、ここで要件審査が行われる。担当官が現場に実査などに出向くことが想定され、審査で承認されれば国で引き取ってくれるが、注意しなければならないのが、国はタダでは引き取ってはくれないということだ。

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 タダで引き取ってくれるとなれば、土地の管理コストが国に転嫁され、国民の間にモラルハザードが蔓延することになる。そこで国は国庫に帰属させる際は、審査手数料に加えて、土地管理費に相当する費用10年分を事前に納付することを求めている。負担金の内容については地目や面積、周辺環境等を考慮して決められるとしているが、詳細は政令で定めるとしている。

 気になるのは要件審査でどういった土地であれば承認されるかだが、現在判明している限りでは、

(1)建物が建っていないこと

(2)土地に担保権や使用収益権などが付されていないこと

(3)他人の利用が予定されていないこと

(4)土壌汚染がないこと

(5)隣地との境界が確定していること

 などが想定されている。また審査にあたっては

(1)勾配のある崖地

(2)土地の管理、処分に支障があるような工作物がある

(3)地中埋設物が存在する

(4)隣地所有者などとの間で裁判に発展するような深刻なトラブルがある

(5)土地の管理、処分に支障が出るような多額の管理費用、労力がかかる

 などの事象が認められる場合には、承認されないとのことだ。