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長寿アスリートに学べ オリックスも「長く」使えるチームスキルを

文春野球コラム オープン戦2018

2018/03/01

 先日、女子スピードスケートで金メダルを獲得した小平奈緒選手の年齢を知りTVを2度見してしまった。女子オリンピックアスリートとしては異例の31歳、それでもまだ肉体は進化しているという。同じくレジェンド・葛西紀明選手は45歳、何と8度目のオリンピック出場である。

 我々が若かりし頃のオリンピックの常連といえばレスリングのアレクサンダー・カレリン選手だった。確か1988年のソウルから2000年のシドニーまで4大会のオリンピックに出場し3つの金メダル、1つの銀メダルを獲得している。12年間も第一線で活躍していたのだから当時の自分は「あぁ、この人はきっと手塚治虫作・火の鳥の生き血でも啜ったんだろうな」と半ば漫画のキャラクターのようなイメージで彼を把握していた。

 それが葛西選手に至っては8度である。繰り返すが8度、26年連続8度目のオリンピック出場。夏の甲子園強豪校でもこれだけ出場するのは難しい。まさに火の鳥の生き血でも啜ったかのような長寿アスリートである。我々の時代の長寿の代名詞といえば「きんさん・ぎんさん」だったが、今や時代は長寿アスリートが「金さんメダル・銀さんメダル」を目指す時代に突入したのであろう。

 選手寿命が長いのは何もオリンピックアスリートに限った話ではない。サッカーの現役世界最年長選手はキング・カズこと三浦知良選手だし、野球の世界でも今期はまだ移籍先が決まらないとはいえイチロー選手の活躍も華々しいし、上原浩治選手も、もう40代である。

フィジカルの戦いからスキルの戦いに

 話は少し逸れるが、我々音楽家の場合はアスリートと違い若きフィジカルが武器になり得る事は少ない。それはフィジカル面よりスキル面が重視されるからで、よく「若き天才ギタリスト」などと取り上げられる事はあっても、それはキャラクター作りの一環である。例えるなら「若鶏の唐揚げ」とか「ツバスの造り」などと同じ事である。勿論高度なスキルを身に付けるにはそれ相応の時間を有する訳で、音楽家にとっては「円熟味を増した」とか「脂の乗り切った」とか言う表現のほうがよく耳にする言葉である。こちらは「ヒネドリのモモ焼き」とか「寒ブリの造り」といったところか。

 話をスポーツに戻すが、長寿アスリートの活躍、これは近代スポーツの高度化及び複雑化によるものが大きいのではないだろうか。野球好きの中では「王・長嶋時代」をノスタルジーを含め至極の野球時代と思う傾向にあるが、当時と比べ野球は随分と近代化が進んだのも事実。変化球の種類などは特に複雑化し、一人の投手が投じる球種も年々多くなっている。もはや「七色の変化球」ではクレヨンが足らず「12色入り」とか「18色入り」とか、お金持ちの同級生が持っていたようなクレヨンが必要である。高度化及び複雑化した競技に必要とされるもの。それは間違いなく高いスポーツスキルである。高いフィジカルのみに任せて超人的に競技を行う事が難しくなった今、高いスキルを合わせ持つ事が強く求められているのであろう。