文春オンライン

“皇帝化”する習近平の中国「笑ってはいけない検閲事情」

個人崇拝と表現規制の「滑稽」と「現実」

2018/03/05
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 中国では現在、インターネット上で「独裁」「皇帝」「袁世凱」「私は反対する」などのことばがつぎつぎに制限・削除され、話題になっている。

さすが中国 上に政策あれば、下に対策あり

 2月25日、国家主席の任期制限を撤廃する憲法改正案が示され、習近平国家主席が最高権力者に居座る構えをみせた。これにたいするネット世論の反応がさっそく規制されたかたちである。

最高権力者として居座る構えの習近平 ©getty

 中国のネット検閲の実態は詳らかではないが、他国の例などをみるに、当局の規制に加え、民間業者や発信者の自主規制・自主検閲も合わさって、このような異様な状態になっているものと考えられる。

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 中国のネットでは、「歴史の逆行」との皮肉をこめて「車をバックさせる動画」が出回っているという。上に政策あれば、下に対策あり。この点はさすが中国人といった対応だ。

「毛主席」を分割してはならない

 中国で個人への権力集中が警戒されるのは、文化大革命期の苦い記憶があるからである。表現規制ひとつとってみてもそれがよくわかる。

 文革期の中国では、「毛主席」は神聖な3文字とされた。そのため、文章中ではかならずひと続きで書かなければならないとされ、もし改行で「毛主/席」などと分割した場合、「毛主席を分裂させる罪」に問われ、紅衛兵から吊し上げられた。

神聖化された毛沢東 ©getty

 また、ある新聞では「毛主席万歳!」とあるべきところを、「毛主席万歳?」と誤植してしまった。まるで毛沢東賛美を疑うようだということで、発行元の社長、編集長、校正責任者が労働改造(労働を通じて思想を矯正させること)を受けることになった。

 さらに、「毛主席」と間違いなく印字しても問題になることがあった。新聞号外の「毛主席」の文字の裏側のページにちょうど「走資派」(資本主義の道を歩む実権派)の文字があったため、「毛主席に反対するために考えぬかれた陰謀だ」と批判され、編集者たちは摘発された――。