フジテレビのバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』が、今月をもって21年の放送にピリオドを打つ。同番組でメインを張ってきたお笑いコンビ・とんねるずの一人、木梨憲武は、きょう3月9日が誕生日で56歳となった。
1980(昭和55)年、帝京高校の同級生だった石橋貴明ととんねるずを結成して以来、テレビ・ラジオ・歌など常に第一線で活躍してきた木梨だが、個人としては画家という一面も持つ。きっかけは1994(平成6)年、『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』(日本テレビ)の企画で、パリに赴き、現地の若いアーティストと対決したことだ。このとき彼はマジック1本で『セーヌ川』という大作を描き上げた。同年には、番組内のキャラ「木梨憲太郎」名義で初の個展(名古屋パルコ)も実現する。
憲太郎のコーナーが終わってからも、「アートを続けたい」という気持ちが生まれ、作品制作を続ける。2014年にはアーティスト活動20周年を記念する展覧会が全国を巡回した。このときインタビューで、テレビの仕事と個人の作品制作で違う点を訊かれた木梨は、次のように答えている。
《本来テレビとアートでは全然違うと思うだろうけど、自分にとってはとても近いです。テレビは美術や照明や演出のプロと一緒につくっていくもので、バランス調整や選択が俺の仕事でもある。でもアートもじつは孤独な作業だけじゃない。制作のなかでいちばん好きな時間が展覧会の設営なんですよね。作品の位置を決めて、照明の当て方とかをみんなで考えてるとあっという間にオープニングの朝になっちゃう》(『美術手帖』2014年6月号)
思えば、とんねるずには、音楽ユニット「野猿」をはじめ、番組スタッフも巻きこんでの企画が多かった。画家としての木梨の活動もそれと地続きというわけだ。『みなさんのおかげでした』終了後、4月には16年ぶりの主演映画『いぬやしき』が公開、6月には個展がロンドンで開催され、翌月より今回もまた日本各地を巡回する予定である。とんねるずの今後とともに、木梨個人の展開も気になるところだ。