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「クマとの間合いのとり方はわかっている」研究歴50年の米田一彦(74)が語る“人里でのクマ出没が増えた理由”とは

「クマとの間合いのとり方はわかっている」研究歴50年の米田一彦(74)が語る“人里でのクマ出没が増えた理由”とは

2023/07/27
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 撮影技術や経験を超えて“その人にしか撮れない写真”というものがある。クマを追いかけて50年、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦さん(74)が撮るクマの写真がまさにそうだ。秋田県出身の米田さんは大学卒業後、秋田県庁に就職し、ツキノワグマによる被害対策に携わった。

撮影 米田一彦

「当時、クマの管理といえば100%駆除を意味しました。行政も研究者も誰もクマのことをよく知らなかったんです」

 そこで米田さんは自らの足で森に分け入り、クマの生態を学んだ。やがて県庁を退職してフリーのクマ研究者となり、「クマ研究の空白地」だった広島県に移り住んだ。

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 その間、森の中で生きるクマの生の姿をカメラに収めてきた。

2021年秋田で雨の中、6mの距離で撮影。さすがの米田さんも「殺気を感じた」という/撮影 米田一彦

「それをニコンサロンに応募したら通って、なぜか個展を開くことになっちまったという次第です」

 米田さんの写真を見て驚かされるのは、クマとの距離の近さだ。中には5メートルほどから撮影したものもあるというが、危険を感じたことはないのだろうか。

「もちろん緊張はしますが、怖くはないですね。長年の経験で、クマとの“間合い”のとり方はわかっていますから」